親のキャリアは子どもの成長にどんな影響を与えるか

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 母親と父親のどちらについても、仕事に費やす時間の長さに関わらず、親が家庭を第一に優先すべきだと考えている場合、子どもの感情面の健康状態は、より良好であった。また、これも仕事に費やす時間の長さに関わらず、親が仕事を挑戦や創造性、楽しみの源として考えている場合には、子どもの状態はより良好であった。そして、当然のことながら、親が子どもと物理的に一緒にいられる場合のほうが、子どもの状態はより良好であった。

 父親が、自分のキャリアに心理的に過度の思い入れを抱いている場合には、働く時間の長さに関わらず、子どもは問題行動を示す確率が高かった。また、父親の仕事による家族や休息時間への認知的干渉――すなわち、父親が心理的に子どものために「いる」かどうかがポイントであり、デジタル機器をいじっている時間は特に心ここにあらず、である――も、子どもが感情面・行動面の問題を抱えていることに関連していた。一方で、父親が仕事で優れた実績を上げており、自分の仕事に満足を感じているときには、働いている時間の長さに関係なく、子どもが示す問題行動は比較的少ない傾向が高かった。

 一方、母親の場合は、仕事で権限と裁量を持っているかどうかが、子どもの心がより健康な状態であるかと関連していた。つまり、母親が、仕事で生じる事柄をみずからコントロールする力がある場合、その子どもはよい影響を受けることが明らかになった。

 さらに、母親が休息やセルフケアのために自分自身に時間を費やし、家事にさほど時間をとられていない場合は、子どもに対するプラスの影響に関連していた。母親が家にいるか職場にいるかだけが問題なのではなく、仕事でない時間に家で何をしているかが重要なのだ。母親が子どものそばにいなくても、その時間に自分自身のケアをしているのであれば、子どもに及ぼす悪い影響は何もない。だが、母親が家にいても家事に従事している場合には、子どもは問題行動に悩まされる可能性が高かった。

 我々がこの研究を実施して以降、父親と母親の伝統的な役割は明らかに変化している。だが、女性のほうが親の責任の精神的負担を多く担っている状況は、いまも変わらない。

 我々の研究からは、母親が家事にさらなる時間をかけるのではなく、自分自身をケアする時間をとることが、子どもの世話をする余裕を後押ししていることが示された。また、父親は、子どもと心理的に一緒にいて、みずからの能力と幸福の感覚が仕事によって高められている場合に、子どもに健康的な経験を与えることがより可能である。

 今回の研究結果の朗報をお伝えしよう。親の仕事人生における上述のような特徴は、少なくともある程度は、みずからのコントロール下にあり、変えることができる。

 調査結果で我々にとって意外だったのは、親が仕事や子育てに費やす時間の長さ(経済や業界の条件を考えると、往々にして自身でコントロールするのは困難な要素だ)は、子どものメンタルヘルスに影響していないことだ。したがって、親のキャリアが子どものメンタルヘルスにいかに影響を及ぼすかを意識していれば、自分がキャリアに置く価値に着目し、物理的にも精神的にも子どもと過ごすためのクリエイティブな方法を試すことができるし、またそうすべきだ。

 必ずしも長い時間を一緒に過ごす必要はない。質の高い時間こそが、本当に大切なのである。


HBR.ORG原文:How Our Careers Affect Our Children, November 14, 2018.

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スチュワート D. フリードマン(Stewart D. Friedman)
ペンシルバニア大学ウォートン・スクール経営学教授。かつてフォード・モーターのリーダーシップ開発センター長を務めた。著書に、Leading the Life You WantBaby Bust(以上未訳)、『トータル・リーダーシップ』がある。ウェブサイトは、www.totalleadership.org。ツイッター@StewFriedman、またはLinkedInで彼にアクセスできる。

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