テクノロジーではなく「信頼」こそが変化のカギ
――書評『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第89回は、2010年に刊行された『シェア』で注目を浴びたオックスフォード大学客員教授であるレイチェル・ボッツマン氏の『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』を紹介する。

人類史のなかでもっとも大きな「信頼革命」

 メディアや政治家に対する信頼が揺らぎつつある一方、友人がシェアするニュースは内容をよく確認することもなく簡単に信頼してしまう。アマゾンで商品を購入する際は、見ず知らずの人のレビューを参考にし、エアビーアンドビーでは一度も会ったことのない人の家に泊まったりもする。

 社会全体で、これまで「信頼」を寄せていたものに対する疑念が溢れだしている。その一方で、新たに生まれてきたサービスでは、「信頼」することのハードルが低くなっているようにも感じられる。信頼に対する認識が、曖昧かつ捉えどころのないように感じられているいま、その構造を非常にわかりやすく説いた本が、今回紹介する『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』である。

 著者はいま、人類の歴史のなかで3度目の、もっとも大きな信頼の革命の入口に立っているという仮説を提示する。「信頼には際立った区切りがあり、最初はローカルな信頼。小さな地域社会の境界のなかで生き、みんながみんなを知っていた時代のことだ。次が制度への信頼。さまざまな契約や法律や企業ブランドを通して信頼が媒介され、商業が地域の境界を越えて、産業社会に必要な土台が作られた時代がそれに当たる。そして3番目が、まだはじまったばかりの分散された信頼の時代だ。」

 現在の分散された信頼の時代では、かつて力や専門性や権威の源泉とされていたものはもう万能でないばかりか、影響力を失いつつある。そして、下から上へと流れていた信頼(私たちが権威者や専門家などに信頼を抱くような状況)が、水平に流れるようになっているという。信頼は一部の権威だけが握るものではなく、あらゆる人やプログラム、ボットなどが持つようになり、分散している時代なのだ。

 本書では、共有経済の拡大、仮想通貨などあらゆる変化の理由や経緯が、この分散した信頼で説明されている。テクノロジーそのものではなく、テクノロジーが引き起こす信頼の革命が、本物の破壊をもたらしているのだ。

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