メールの悪習は企業文化を壊し、
生産性の低下を招く

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ビジネスコミュニケーションがメール中心になったことで、業務効率は飛躍的に向上した。ただ、良いことばかりではなく、それによって新たな問題が浮上している。24時間365日、いつでもどこでも連絡できるようになったことで、勤務中のみならず、退社後や休暇中もメールに支配されるようになったのだ。心休まる時間がなくなり、集中力や創造力が削がれ、生産性の低下を招いている。筆者はそうした自体を防ぐために、リーダーはメールのルールを設けるべきだと主張する。


 バージニア工科大学による新たな研究は、ナレッジワーカー(知識労働者)なら誰でもすでに知っていることを明らかにした。勤務時間のメールに対応することが引き起こす不安は、当人ばかりでなく、その家族にもダメージを与える、というのである。

 なかでも特筆すべき発見は、勤務時間外にメールを読んで返信するのに長い時間が取られる点だけが、社員(およびそのパートナー)のストレスの原因ではないことだ。実のところ、さらに大きな不安をもたらしているのは、社員が退社後もメールに対応すると期待されている点である。

 一人の上司を例に挙げよう。彼女は、勤務時間外や休暇中にも部下が返信すべきだとは考えていないが、そうはっきり部下に伝えたこともない。言わなくても、「わかっているはず」と思い込んでいる。したがって、勤務時間外の時間帯や休暇中の部下に自分がメールを送信しても害はないと考えている。なぜなら、この上司の想定では、部下が仕事に戻るまで、送信したメッセージは未開封のままだからだ。

 だが実際には、この部下は返信しなくてもよいとは知らないので、退社した後も休暇中も、メールにログインする(それに、ほかの社員もそうしていることは知っている)。そこに上司からのメールがあれば、部下は上司が返信を期待していると解釈する。こうして、オフィスを離れている間もメールをチェックすることが期待されている、と部下はますます信じるようになり、さらに上司自身が四六時中働いているように見えることが、この思い込みを強める。

 このように意思表明がないまま思い込みが行き違うと、不健全な企業文化が根付く原因になる。

 生産性に関する講演や研修に携わる私は、訪れる先々で、上記のような光景を目にしてきた。ただでさえ社員は、勤務時間中にメールから離れられないと感じ、そのせいでより重要で満足度の高い仕事を仕上げるのが難しいと感じている。そのうえ、勤務時間外や週末、そして休暇中までメールをチェックしなくてはいけないというプレッシャーを感じると、仕事の質は著しく損なわれる。休息して充電するチャンスがまったくないのだから。

 精神的な活力を回復する時間がなければ、社員の創造性、集中力、および思考力も次第に低下していく。ストレスを感じ、バランス喪失感にもさいなまれる。これらすべてが、バーンアウト(燃え尽き症候群)予備軍を形成する。

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