働きながら子育てする親に贈る
4つのアドバイス

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働きながら子どもを育てる苦労は計り知れない。仕事と子育てだけでなく、同じ時期に両親の介護などの問題ものしかかってくることもある。ただ、そこには苦しいことばかりではない。その困難なミッションをやり遂げて、子どもを一人前に育て上げた先には、素晴らしい楽しみが待っていると筆者はいう。子どもたちから、人生の先輩として尊敬の眼差しを向けられるようになるからだ。本記事では、子育てと仕事の両立に悩む親に対して、4つのアドバイスが贈られる。


 働きながら子育てをする難しさやストレスに関する記事は、世の中にあふれている。だが本稿では、その喜びについて述べたい。

 しばしの間、子どもが成長して家を出た後にあなたを待っている楽しみに、スポットを当ててみよう。そのときは、意外と早くにやってくる。

 人生における幸福のU字曲線について、聞いたことがあるだろう。世界中どこでも、人の幸福度は30歳から50歳の間に急激に落ち込む。子育て、結婚生活、親の介護、そして仕事が重なる時期は、なかなか厳しい。これには多くの人が、うなずくだろう。

 しかし、あまり公にはされていないが、子育てを終えた親には楽しみが待っている。あなたが20年もの間、愛情を注ぎ、寄り添い、励ましてきた子どもが、自分らしく才能を開花させていくのを見るのは、何にも勝る喜びだ。しかも、あなた自身にも、同様のことをする自由を取り戻させてくれる。

 突然訪れるぽっかりと空いた時間、その時間にできることと言えば……仕事である。プロフェッショナルとしての目標や夢にふたたび集中できることは予想外の贈り物であり、これを考慮して計画を立てている人は少ない。30代の私は、60代には仕事を引退しているだろうと考えていた。しかし56歳のいま、まだキャリアは始まったばかりだと思うようになった。

 家族の世話をしてきた人にとって、これは発見であり、解放である。私の場合、週末と週日の夜は自分の時間だという事実に慣れるのに、数年かかった。

 それまでは常に、何か忘れているに違いないと、メールの受信箱をチェックしていた。誰かをどこかまで車で送る必要も、子どもの宿題の作文をチェックする必要も、ティーンのメール用語を解読する必要も、もうない。その代わりに、私の脳内にできた空間からは、新たな創意とチャンスがあふれ出してきた。いまでは、夫と日曜のブランチを楽しみ、それからおしゃれをしてマチネを見に行くこともできる。本当の大人になった気分だ! 

 仕事の出張も、親としての罪悪感なしに、世界中どこにでも、立て続けに行ける。出張にはときどき、半リタイアの身である夫もついてくる。そうなると、仕事の出張は疲労と老化をもたらすものではなく、突如として楽しくエキサイティングなものになる。

 もう1つ意外な発見があった。子どもはしばしば、非常に興味深く、時にはインスピレーションを与えてくれる大人になる。

 子どもは面白い場所で面白い仕事をし、あなたはその場所を訪ねて行ける。そして、子どもが社会人としての経験を積むほど、あなたの存在がいかに有意義かに気づく。あなたの仕事の人脈が物を言うだけでなく、あなたが学んできた多種多様な事柄のほぼすべて、会計の知識からリーダーシップに至るまで、すべてが役に立つ。

 我が子の瞳が誇らしげに輝くのを見る以上にすばらしい報いは、まずない。あなたが実は意外にも興味深い人物であることに気づいた子どもが、こちらを見つめてくる眼差しは、最高だ。学芸会を見に行けなかったり、サッカーの練習を途中で抜け出したりして、親としてひどい罪悪感に悩んだ時間が、すべて報われる瞬間である。

 子どもたちが、事あるごとに罪悪感にさいなまれる親に巧みに植え付ける、無数の小さな疑念は、彼らが大人になると霧散する。豊かな知識に裏打ちされたアドバイスや、スキルを持った知人、さらには就職口を求めるようになると。

 子どもたちが大人になったとき、自分が有意義な人間でいられることは、非常に大きな喜びだ。子どもは育つと家を出るのではない。子どもは育つと電話をしてくるのだ。そう、何度も、何度も。

 もちろん、残念ながら、必ずそうなるとは限らない。私は親業に専念した人も知っているし、反対に、仕事だけに集中してきた親も知っている。私の経験では、この種の親子関係は、時に困難に見舞われる。こうした親は子どもに、自分の払った犠牲に感謝してほしいと思い、子どもはそうしてくれと頼んだわけではないからだ。

 カール・ユングは明快に言う。「親が実現できなかった生活ほど、子どもの心理に強い影響を及ぼすものはない」。実は、ほどほどが幸福をもたらすのだが、バランスや中庸のよさは1日や1年では判断できない。数十年を要するのである。

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