中国と欧州の思惑が一致し
先進テクノロジーを世界にアピール

夏季ダボス会議 現地レポート

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世界経済フォーラム(本部:スイス)の第12回夏季ダボス会議(the New Champions 2018年次会合)が9月18~20日、中国の天津市で開催された。参加したベンチャーキャピタリストの山本康正氏が、会議の特徴と意義をレポートする。

山本 康正
キャピタルテクノロジー合同会社 代表パートナー。
東京大学修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。卒業後、Googleに入社し、FinTechや AIなどで日本企業のデジタル活用を推進。世界規模の起業家支援を行う財団 Endeavor の立ち上げ時のManaging Directorを務め、現在ベンチャーキャピタリストとして日本と海外のベンチャー企業のビジネスモデルを精査し投資している。ハーバード大学客員研究員。

 今年の会議のテーマは、「第4次産業革命における革新的社会の形成」。元々、政治と金融に強みをもっている会議だが、夏季ダボス会議は2007年から、テーマをテクノロジーにフォーカスして、中国の天津と大連の両都市で交互に開催されるようになっている。

 ダボスというブランドの高い会議の開催を中国に許可することで、中国市場に食い込みたい欧州と、テクノロジーで最先端を行くことを世界にアピールしたい中国の思惑が合致しているのだ。

 今年は、政治家、ビジネスパーソン、学者、メディア関係者に加え、初めてスタートアップの経営者を受け入れ、およそ2000人が参加。最大規模となった。スタートアップ招聘の背景には、中国がベンチャーキャピタルの組成総額で米国を抜き世界一になったことがある。筆者は今回、日本からの唯一のベンチャーキャピタリストとして推薦するベンチャー企業8社の経営者を連れて参加した。

 現地に到着してまず感じるのが、天津の市を上げての力の入れようだ。時速300kmを超える新幹線で北京から40分ほどで、天津駅に到着する。会場は夏季ダボスを開催するために建てられたと言われる巨大な国際展示場である。会場内側のデザインは、冬のダボス会議のセットとスタイルを踏襲する形で、洗練されたヨーロッパの雰囲気を漂わせている。

 プログラムは、30~60分のセッションが、7つほど同時に進行する。内容はカテゴリー分けされており、今回は

・「内包的な成長に向けたイノベーションの促進」(Accelerating Innovation for Inclusive Growth)
・「人間を中心に設計したテクノロジー」(Designing Human-Centred Technology)
・「拡大するイノベーションエコシステム」(Expanding Innovation Ecosystems)
・「実験的なマインドセットの開放」(Unlocking an Experimental Mindset)

 という4つの柱であった。

 中でも、「拡大するイノベーションエコシステム」に、力が入っていたと感じられた。グーグルやフェイスブックの中国国内への参入を規制している一方で、優秀な科学者や、EVや人工知能の会社には広く門戸を開いて、オープンイノベーションを歓迎しようとしている。「中国の市場開放40年後」や「中国の金融開放」という専用のセッションが用意されていた。

 各プログラムで共通しているのは、登壇者と参加者の距離の近さである。参加人数の少ないセッションはもとより、人数の多いセッションでも登壇者との距離を近く、質問がしやすいカジュアルな空間に設計されている。セッションの形式は、講師1人や、ワークショップ形式で4人ほどの講師がいるなど多様である。

 内容を俯瞰してみると、テーマ別では、ブロックチェーン、5G、サイバーセキュリティ、EV、次世代モビリティなど、テクノロジーや科学に関するプログラムが6割、経済・起業エコシステムに関するセッションが3割、規制に関するセッションが1割というところだ。

 視点で分けると、グローバルな視点でのテーマ設定が6割、中国の視点でのテーマ設定(中国5000年の歴史、中国国内投資、一路一帯など)が4割と、中国についての参加者へのアピールが強い。

 セッションの中では、まず、「少人数の未来のモビリティについてのワークショップ」が目を引いた。リニアの2倍の速度で走れると謳うチューブ式車両を開発する、英国ハイパーループ(Hyperloop)の共同創業者ビボップ・グレスタ(Bibop Gresta)氏が、各国の交通大臣と、未来のモビリティはどうあるべきか、どのような機能が期待され、そのためには規制はどうあるべきか、などを議論した。

 また、中国の高級電気自動車バイトン(Byton)のCEOのカーステン・ブライトフェルド(Carsten Breitfeld)氏はパネルディスカッションで、自動運転やバッテリーの改善が近い内に進めば、EVがデジタルビジネスのハブとなり、多くの企業とビジネスができると提唱した。

 午前のセッションが終わり、ランチタイムになると、参加者が互いに参加したセッションの感想を議論したり、通りがかる参加者と交流したりする。事前に参加者に配布されたアプリの中にSNS機能があり、自分のプロフィールや関心事を登録しておくと、同じ志向の人物にマッチングしてくれたり、プロフィールを見た人が連絡をくれたりする。 筆者も、会場で会って事業内容を売り込みたいというアグレッシブな起業家からの連絡が多く来たので、待ち合わせをして説明を聞いた。

 午後も7つほどのセッションが同時進行し、18時頃まで続く。夜は、夏季ダボスの関連企業や団体が、自分たちを売り込むレセプションパーティや、リクルーティングや仕事関係の構築を兼ねたプライベートディナーが盛りだくさんである。招待は基本的に、事前配布のSNSのアプリから行われ、誘われたレセプションをハシゴする夜が始まる。中国のファーウェイ・テクノロジーズは幅広く招待状を出し、今年末にも始まる5Gへの競争に対する意気込みを語っていた。

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