Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

イノベーションに貢献する調達組織へ
進化するためのデジタル活用

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3.コード体系の再整備・恒常的見える化

 コスト最適化活動の内訳を分解すると、見える化8割、探索・企画2割になっていないだろうか。会計視点で設定した勘定科目コードや製造視点で設定した品目コードを元にコストデータを眺めても、自社の消費の実態は見えてこない。だれが、何の目的で、いくらの単価で、どういうスペックの、何をどれくらい購買しているのか。これをリアルタイムに正しく把握することができれば、コストを最適化する施策や知恵は自然と湧いてくる。

 しかしながら、これらの情報を手に入れるために、各人が個別に多大な労力を払っており、部門の壁に阻まれてスタックしているケースも多い。導入されて久しいERPはこの点を解決するソリューションとして十分ではないように考えられる。コストマネジメントに適した粒度でコード定義を整え、スペンドデータが正しい費目コードで蓄積されるプロセスをデジタルの力を使って敷き直せば、イノベーティブなコスト探索活動に充てられる時間を飛躍的に生み出すことが可能だ。

 まずシステムの問題以前にコード体系の論理的な見直しをしなければならない。概して「コストコード」は、バジェッティングからモニタリングのPDCAを回す前提で考えられておらず、非常に粗いカテゴリー分けになっている。たとえばアクセンチュア・ストラテジーが行うゼロベース・バジェッティングのなかで定義する費目コードの分類は約150である。一般的な企業では約70~100程度であるため、この数値を提示すると驚かれることが多いが、コストコードの分類が粗い結果、要元・消費元部門がコストコードをインプットする際に、「その他」のような、何でも入れられるコストコードを使用するケースが非常に多くの企業で発生している。トータルスペンドの半分程度の金額がここに集まっており、実質コスト分類がされていないに等しい企業も珍しくはない。

 次によく受ける質問は、「ERPの他ファンクションとの制約で費目コードはそこまで細かくはできないはずであり、約150の分類からユーザーに選ばせるのはあまりに難解である」という点だが、ここにきて初めて基幹系ERPのみで調達機能をサポートすることの限界が明らかになり、ARIBAやCOUPAなど調達固有のソリューションを併用するトレンドも理解できるようになるはずだ。

 ユーザーの業務導線に応じて、基幹系ERPでは難しい細やかなバリエーションで選択するコストコードを絞るよう制御をかけ、またユーザーがコストコードを意図的に選択できないように業務導線自体をデザインする。ここにデジタルツールを使った、単なる業務工数削減ではない本当の意味での「デジタル調達BPR」の要諦がある。

* * *

 調達組織のミッションを、ルーティンとしてのコストの番人から製品・サービスのイノベーションに対する貢献へシフトしていくためには、CPO自身がCROと協議・合意をし、調達組織のメンバーのコスト探索の方向性を指示することが必要と考える。そのうえで彼らのルーティンワークの自動化、リサーチ・インサイト抽出に対するAI活用を進めることが重要である。その最初の一歩として、やはり古くからの課題であるコード体系の再整備や恒常的見える化は避けては通れないが、これらをデジタルの力を使って解決していきたい。

太田 陽介(おおた・ようすけ)
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
サプライチェーン&オペレーションズグループ日本統括 マネジング・ディレクター

慶應義塾大学卒業後、2000年アクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年より戦略部門に異動。製造業・ハイテクなど複数産業、また国内外でのサプライチェーン企画・設計を多数歴任。 サプライチェーン以外にも生産、調達、R&DなどCOOのアジェンダを広くカバーする経験を有し、ビジネスモデル変革からそれに応じた機能設計までを一貫整合して実施するスタイルで定評を得ている。
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