Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

自社の強みとゴールを見定めたうえで
他社との協働を模索していくべき

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デジタル技術を活用したスタートアップ企業の台頭に伴い、大企業がスタートアップに投資する動きも活発化している。自前主義を捨て、外部との連携で新規事業を創出するオープン・イノベーションの取り組みがそこには見て取れるが、期待した成果を得られるかどうかは未知数だ。オープン・イノベーションの課題、日本企業に適したオープン・イノベーションの手法などについて、一橋大学大学院経営管理研究科准教授の西野和美氏に聞いた。

成果が出やすいのは「プッシュ型」の取り組み姿勢

――技術革新の手法として、オープン・イノベーションが注目を集めている背景とは。

西野和美(にしのかずみ)
一橋大学大学院 経営管理研究科 准教授

一橋大学商学部卒業。化学メーカー勤務を経て、2001年、一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位修得退学。2002年、一橋大学博士(商学)。東京理科大学経営学部経営学科専任講師、イノベーション研究科技術経営専攻准教授を経て、2017年、一橋大学商学研究科准教授、2018年より現職。専門は経営戦略、技術経営。「製造業における研究開発マネジメント」「新規事業創出の論理」「ビジネスモデルの動態モデルと持続的競争優位性」などについて研究を行っている。

 ヘンリー・チェスブロウ(カリフォルニア大学バークレー校客員教授)がオープン・イノベーションを唱えたのが2003年ですから、それから15年経ちます。日本では2005年くらいに、いくつかの先駆的企業が専門部署を立ち上げ、その取り組みが本格化したのは2000年代後半のことです。

 オープン・イノベーションの概念自体はさして新しいものだとは思っていません。ほかの会社と一緒になって新しいものをつくるという取り組みは、日本は意外と得意で、自動車産業では「ケイレツ」という形で連携し、新しい技術を開発してきました。

 もう一つの要因としては、インターネット・ビジネスの隆盛により、ソフトウエアの重要性が高まったことが挙げられます。それまでハードウエア至上主義だった日本のエレクトロニクスメーカーは方向転換を余儀なくされるとともに、業績の悪化も手伝って選択と集中を進めました。その結果、自前主義だけで技術開発を進めることが難しくなり、外部のソフトウエア企業と組む必要に迫られたのです。

 日本企業がオープン・イノベーションの取り組みに本腰を入れ始めて約10年が経ちますが、試行錯誤が続いているようです。何をもってオープン・イノベーションの成功と見なすのか、あるいは成功のために自社は何をすべきかといった点について、悩んでいるような企業も見受けられます。

 オープン・イノベーションはあくまでも手段です。最終的には企業の利益を上げることが目的だと私は考えます。にもかかわらず、手段の目的化が起きています。競争力を強化し、収益性を高めることがイノベーションのゴールであって、その一つの手段がオープン・イノベーションです。ところが、オープン・イノベーション的なことをすることが目的になっていて、取り組みを始めたはいいが、はたしてこれでいいのだろうか、成果はどのように考えればいいのだろうかと迷ってしまうのです。

――社長や上司に言われたから、とりあえず始めたけれど、確信がないまま進めてしまうのでしょうか。

 私は、企業がオープン・イノベーションに取り組む姿勢を3つに分類しています。1つ目は「プッシュ型」で、これは、自分たちがやるべきこと、達成すべきことが明確で、そのために必要な情報や技術、人材などを積極的に外部から探すパターンです。

 2つ目は「プル型」。アクセラレーター・プログラムやハッカソンなどのイベントを開催し、たとえば「高齢化社会に向けてわが社が提供できる新サービス」といった大まかな課題についてアイデアを募る、あるいはイノベーションラボのような「場」をつくって協働していくパターンです。

 そして3つ目は、「共創型」です。新規市場へ参入したいが、問題のありかや事業コンセプト、必要となる具体的な情報や機能がはっきりしていない企業が集まり、情報をやりとりするなかで問題を明確にして事業コンセプトを設定し、新たな価値をつくっていくパターンです。

 成果を出しやすいのは、「プッシュ型」です。一方、「オープン・イノベーションごっこ」に陥りやすいのが「プル型」と「共創型」で、アイデア出しを外部に依存するだけになってしまい、成果を出すのは難しいでしょう。

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