企業内の年齢差別をなくすには、
若さだけでなく知恵の価値を認めなさい

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米国のハイテク業界ではいま、高年者への差別やリストラが目立つという。人生100年時代といわれながら、職場では高年労働者の活躍の場が減っている。この現代の矛盾を解消して年齢差別をなくすには、どうすればよいのだろうか。


 全米通信労働組合は2017年12月、サンフランシスコ連邦裁判所で、国内最大手の雇用主数社を相手取り集団訴訟を起こした。ここにはアマゾン、Tモバイル、キャピタル・ワン、エンタープライズ・レンタカーをはじめとする広範な企業が含まれていたが、最近になって訴訟範囲が拡大された。

 これらの企業は、フェイスブックでの自社広告のターゲットから故意に高年齢の労働者を除外したことで訴えられている。

 調査報道メディアのプロパブリカによると、IBMは過去5年間で、約2万人もの高年労働者(40歳以上)を密かに追い出していた。

 ハイテク業界に関しては、多様性のはなはだしい欠如、そして「ブロカルチャー」(米男子大学生の友愛会と共通するような、軽薄で男尊女卑的な職場文化)の蔓延が散々指摘されている。しかし、シリコンバレーの大手150社が過去10年間で直面した年齢差別に対する告発は、人種差別や性差別のそれを上回っているのだ。

 1967年に成立した「雇用における年齢差別禁止法」は、40歳以上の労働者に対する差別を禁じている。しかし、高齢者団体AARPの最近の調査では、45~74歳の労働者の3分の2が、年齢差別を目撃、あるいは経験したことがあると答えている。

 集団訴訟とジャーナリズムによる厳しい監視は、正しい方向に進む足がかりになるが、法律を施行する試みだけでは不十分だ。忘れてはならないが、女性、黒人、障がい者、同性愛者などの平等権は、法改正のみによってもたらされたのではない。多くは法成立に先立って推進された、意識改革があってこそ実現したのである。

 だが米国の文化は、こと年齢差別の問題に関しては、他分野よりも改善が進んでいない。工業時代からハイテク時代へと目覚ましく発展するにつれ、子どもの頃からアップルに親しんで育っていない人々の世代よりも、電子機器やギガバイトを理解しているデジタル・ネイティブが極端にひいきされるようになった。

 ベビーブーム世代はきわめて健康で、活力にあふれ、仕事を長く続けている半面、自分たちは職場にそぐわないと感じることが増えている。これぞまさに、現代の矛盾の1つだ。自分たちの経験と、それに伴い重ねた年齢を、上司や未来の雇用主は資産ではなく負債と見なすのではないかと、彼らは至極もっともな危惧を抱いている。次第に影が薄くなり、ゆくゆくは見捨てられるのではないかと不安に思うのだ。

 多くの業界、特にハイテク業界では、35歳で「年だ」と感じさせることがある。75歳になるまでフルタイムで働き続けるかもしれないというのに。その間の40年間は、メリハリのない惰性のように感じるのではないだろうか。100歳まで生きる人が増えているこの時代には特に、である。

 寿命が伸びる一方で、権力は若年齢へと移行している。米国の被雇用者の年齢中央値は42歳だが、ハイテク業界の大物リーダーたちの年齢中央値はそれより10歳以上若い。HBRのデータ分析によると、ユニコーン企業(評価額10億ドル以上の非上場企業)の創業者の平均年齢は31歳で、CEOの平均年齢は41歳だ(かたや、S&P500企業のCEOの平均年齢は52歳である)。

 問題は、こうした若いリーダーの多くが、その地位にふさわしい人間となるはるか以前に、権力の座に上らされることだ。経験に乏しく、助言や指導も得ないまま、急成長している会社や事業部の運営を担うことが多い。あるハイテク企業の若いリーダーは、「どうすれば自分のリーダーシップ能力を、電子レンジでチンするように向上させられますか?」と私に尋ねたほどである。

 答えはこうだ。知恵と経験、専門知識を備えた年配の世代がいる。彼らは指導、コーチング、助言を提供する高度な能力を有している。この世代が野心的なミレニアル世代と組めば、持続可能なビジネスを生み出せるのだ。

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