チームの調和が行きすぎると
創造性を破壊しかねない

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チームの仕事に協調性は欠かせないが、相手の意見に賛同し合うだけでは一緒に働く意味はない。そうではなく、チーム内で一定の緊張感が保たれ、適度な対立が生まれることによって、いっそうの創造性が発揮されると筆者は言う。本記事では、それを実現するための具体的な方法が示される。


 米国のチューインガム会社の創業者であり、大物実業家のウィリアム・リグレー・ジュニアはかつて、ビジネスは意見を異にする人々によって構築されると指摘し、「2人の意見が常に一致する場合、2人のうち1人は不要であるということだ」と述べた。実際、ビジネスばかりでなく、政治、スポーツ、そして芸術の分野において、アイデアの連携で成功を収めた例と同じくらい、創造的な緊張や不一致が原動力となって成功したパートナーシップの例がある。

 マイルス・デイヴィスとジョン・コルトレーンはジャズに革命を起こしたが、2人の関係は一触即発で、コルトレーンは2回もバンドを脱退している。スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは、スタイルと性格の点でまったくのミスマッチだったが、2人の強み(ジョブズの明確なビジョンを持ったセールスマンぶりと、ウォズニアックの天才的な発明家気質)を融合できたことが、アップルのDNAの核となった。シャキール・オニールとコービー・ブライアントは、NBAファイナルで3年連続の優勝をチームにもたらしたが、周知の通り2人の関係はとげとげしく、ピリピリしたものだった。アンゲラ・メルケルとニコラス・サルコジは、2008年金融危機後の欧州安定化に大きな役割を果たしたが、公の場の2人はちぐはぐなコンビだったし、プライベートな場面では互いに相手をまねてあざけていた

 こうした有名な事例を裏付ける結果が、科学的研究からも導かれている。チームの調和をあえて乱すことで、創造性とイノベーションが向上しうると証明されているのだ。

 たとえば、製品開発チーム100組を対象とした最近の研究結果によれば、チームの調和を壊す2つの共通要因である多様性とタスクの不確実性は、創造性豊かなパフォーマンスと正の相関を示した。同様に、理論的研究や定量分析をレビューした結果、リソース(時間、金、人など)が潤沢なときより乏しいときのほうが、チームは往々にしてより創造性を発揮することが判明した。さらに、異を唱えたり、異なる見解をめぐって協議したり、ある程度の緊張の下で働いたり、という具合に、タスクをめぐって生産的な対立ができるチームは、よりイノベーティブになる傾向がある。

 こうした理由から、スタートアップの「養成機関」として知られるYコンビネーターは、サポートを感じられる環境の中でプレッシャーを創出するという見事な手法を編み出した。未来の大物起業家たちを集めて、サポート体制の整ったコミュニティを確立し、オープンな議論を促し、オープンなフィードバックが規範である環境を整える。同時に、ここから数々の著名スタートアップが巣立った歴史と、そうした先達へのアクセスがあることから、参加者は大胆な目標を立てるようになる。また、繰り返しアイデアをプレゼンしてはフィードバックを受けることで、緊張と対立が持続する。

 逆に、調和に浸りきっているチームや組織は、怠惰と現状満足に傾き、クレイトン・クリステンセンが20年前に『イノベーションのジレンマ』で指摘したように、やがて衰退と消滅に向かう。コダックからブラックベリー、ブロックバスターに至るまで、かつて市場に君臨した企業が、現状満足によってトップの座から転落した事例ならば、ビジネス・スクールが選ぶのに迷うほどある。

 企業にとって成功と幸福は、「そこそこの不満」以上に大きな脅威である。現状に満足していると、創造性は確実に逃げていく。文明の歴史上重要なイノベーションは、いずれも不満を抱いた知識人たちの成果、すなわち、物事に関する現在の秩序に不満を持ち、既存の調和を破壊しようとした人々の成果だった。

 リーダーにとって教訓は明白だ。すなわち調和と闘い、チームや組織にいくらかの緊張をもたらし、適度の対立を進んで活用することである。これを実現するための方法を3つ、以下に提案する。

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