人間中心のシステム設計による
「よい職場」戦略で生産性を高める

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最新号8月号の特集テーマは、「従業員満足は戦略である」です。人材という経営資源が稀少な今日、従業員満足を高め、生産性を向上させることが重要な経営戦略であるというのが特集の趣旨です。

ゼイネップ・トンMIT准教授の
魅力溢れる講義動画を視聴できます!

 日本も米国も景気拡大が続き、失業率は歴史的低水準にあり、人材の需給が逼迫しています。特に、流通、運輸、飲食、サービスなど、第3次産業での人材不足が深刻です。

 第3次産業で人材不足が顕著なことの背景には、非正規雇用の比率や転職率が高いということがあります。人材の定着率が低いのです。賃金水準など労働条件が悪く、人材教育などの制度が不十分なまま放置されてきて、今日、問題が一気に噴出した格好です。

 第3次産業の中にはホテル旅館業や外食業のように、景気動向に需要が大きく左右される産業があり、人材の需給調整がしやすい非正規雇用の比率が高くなります。

 俯瞰して見れば、先進国では経済の発展や成熟化に伴って就業人口比率が第1次産業→第2次産業→第3次産業の順に増加していく傾向にあり、歴史の浅い第3次産業は労務制度や人材育成制度の整備において取り残されてきました。特集の中核論文で筆者のゼイネップ・トン氏(マサチューセッツ工科大学<MIT>スローンスクール・オブ・マネジメント 非常勤准教授)が提言する「よい職場」戦略は、「トヨタ生産方式」を模範にしています(同氏の魅力溢れる講義動画をここで視聴できます!)。

 製造業で磨かれたマネジメントを第3次産業で活用して、従業員の創意工夫を促し、生産性を高めるという戦略です。

 第3次産業に残る課題は、特集における日米3人の経営者のインタビューや論考の随所に見られます。

 老舗旅館の陣屋は、宮﨑知子氏が女将を継ぐ段階では、倒産の危機にありました。当時の従業員は顧客の出迎えや料理の配膳などの1つの業務しかこなさず、その業務がない時間はただ待つ状態にあったり、予約台帳は手書きのもの1つを旅館全体で共有したりなど、前近代的な仕事の仕方でした。

 ウォルマートU.S.では、数万人の店舗従業員が生活保護を受けながら働くなど賃金水準は極めて低い状態でした。ファミリーマートは日本で最先端の小売企業ですが、それでも多くの非合理な作業を店舗従業員に強いてきました。

 いずれも3人の経営者が、店舗の現場を視察して、初めて認識した事実です。

 それまでの経営トップは、働く現場を真剣に見たり、従業員の声に真摯に耳を傾けたりしていなかったのではないでしょうか。ウォルマートU.S.社長が言うように「利益が出ているからこそ多くの罪が隠れてしまう」という面があったのかもしれません。特集では、3人の経営者が、どのような施策によって従業員満足を高めているかを明かしています。

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