Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

実用化が見えてきた「空飛ぶクルマ」
異業種参入で新しいビジネスの創出も期待

1

つながる車(コネクテッド)、自動運転(オートノマス)、共有(シェアリング)、電動化(エレクトリック)の頭文字を取った「CASE」と呼ばれる変革の波が自動車産業に押し寄せている。一方、モビリティ革命の文脈で注目したいのが、「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」、そして、空飛ぶクルマである。「空飛ぶクルマ研究ラボ」を率いる慶應義塾大学大学院の中野冠教授に、その取り組みと進捗などについて聞いた。

空飛ぶクルマの実用化は地上の自動運転よりも早い?

――SF映画の世界だった「空飛ぶクルマ」構想が、ここに来て世界的に活発に動き出している背景とは何ですか。

中野 冠(なかのまさる)
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授

1978年、京都大学工学部数理工学科卒業。1980年、京都大学工学部数理工学専攻修了後、豊田中央研究所入社。1997年、名古屋工業大学後期博士課程生産システム工学科経営コース修了(在職)。2008年より慶應義塾大学教授、現在に至る。2013年、スイス連邦工科大学訪問教授。

 ドローンの技術開発が進み、ホビーのドローンが知られていることが大きいでしょう。ホビーのドローンは垂直に離着陸できます。これを大型化すれば、人を乗せることも可能になるのではないかという機運が高まり、グーグルやウーバー、エアバス、中国のイーハンなどが相次いで参入したことから、人々の関心も高まっています。

 日本でも、トヨタ自動車が機体システムの開発を手掛ける有志団体「カーティベーター」に対する資金援助を公表してから、空飛ぶクルマの認知度は一気に向上しました。彼らが開発する空飛ぶクルマ「SkyDrive」は、2020年の東京オリンピックの開会式で聖火台に点灯することを目標としています。

――「空飛ぶクルマ研究ラボ」の活動内容は。

 機体システムのデザインのほか、実用化に必要なビジネス・アプリケーションの企画や運用管理システムのコンセプトデザインを行っています。

 空飛ぶクルマが安全に長時間飛ぶには、まだまだバッテリーの能力が不十分です。動力をハイブリッドにするのか、翼をつけるのかどうか、ドミナント・デザインも決まっていません。また、ビジネス・アプリケーションも「これだ」というものがはっきりしていません。エアタクシーなどで都市の上空を飛ぼうとすると、安全性の問題があり、国内ではなかなか認証が下りないでしょう。

 それ以外では、離島への移動手段、災害時の人命救助、ドクターヘリの代替などが考えられます。少子高齢化が進む日本では、過疎化が進む地方市町村で緊急の場合の運送手段の必要性が高いという考えがあります。

 一方、欧米では都市化の進展により、都市部の渋滞が深刻な問題となっています。これを解決する方法として、ウーバー、エアバスなどは「エアタクシー」の実用化を目指しています。これらの企業は、大きい市場をターゲットにしています。日本の都市部は一般交通機関が発達しているので、地方での実用化のほうが早いかもしれません。

 多くの人が、空飛ぶクルマの実用化は地上のクルマの自動運転よりも遠いと思っているかもしれません。しかし、私は地上のクルマの自動運転の完全自動化は意外と難しく、空飛ぶクルマの自動化のほうが先に実用化するのではないかと考えています。米国では、ウーバーの自動運転実験車両が死亡事故を起こし話題となりましたが、地上には、自動運転しているクルマもいれば、そうでないクルマも走っています。また、人や自転車など、交通システムが認識できないものも、不意に現れたりします。空には、人や自転車はいません。機体設計の課題をクリアし、運用管理システムが整備されれば、一気に進展する可能性があると見ています。

次のページ  要素技術よりアプリケーションの開発が重要»
1
Technology 関連記事
Going Digital インタビュー」の最新記事 » Backnumber
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS