元FBI交渉人が教えるテクニック
――書評『逆転交渉術――まずは「ノー」を引き出せ』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第80回は、元FBIの交渉人で現在は自身の会社、ザ・ブラック・スワン・グループで交渉トレーニングと助言を行っているクリス・ヴォスとビジネスジャーナリストのタール・ラズの共著書逆転交渉術――まずは「ノー」を引き出せを紹介する。

FBIが絡む事件では合理的問題解決は望めない

 交渉学をテーマにした経営書というと、まず『ハーバード流交渉術』を思い浮かべる方も多いだろう。問題解決をシステム化することで、交渉当事者の双方に利益をもたらす取引を成立させようというこの交渉術の考え方は、画期的だった。人(すなわち感情)と問題を切り離し、相手の立場に焦点を合わせ、協力してウィン‐ウィンの解決策を導き出す理性的で合理的なアプローチ――このやり方の登場で、FBIもニューヨーク市警察も、交渉のやり取りを「問題解決」の視点から取り組むことに重点を置いた時期があった。

 しかし、FBIが相手とする誘拐犯やテロリストには、このやり方はどうもうまくないことがわかってきた。1992年のルビー・リッジ事件や1993年のブランチ・ダヴィディアン事件(どちらも狂信的な人間による立てこもり事件)などの悲惨な結末から、人質交渉のほとんどは合理的問題解決などまるで望めない状況であることが否定できなくなったのだ。

 合理的ではなく、感情が引き起こした事件であるなら、交渉スキルは感情的で不合理な部分に焦点を絞らなくてはならない。そうした教訓からFBIは実際の交渉の現場で役立つ心理的戦術や駆け引きのテクニックを磨いてきた、これらを解説しているのが、本書『逆転交渉術』ある。

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