Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

デジタルM&A における
ビジネス・デューデリジェンス(前編)

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2018年2月、アクセンチュアはグローバルで3600社以上の企業を対象として実施したデジタル・ディスラプションの現状での進展度合いと将来予測に関する調査結果を発表している。それによれば、63%の企業が「すでに大規模な創造的破壊に直面している」と回答し、44%が「創造的破壊の兆候を強く感じている」と回答している。デジタル・ディスラプションはもはやグーグル、アマゾン、フェイスブックなどの巨大プラットフォーマーだけの話ではない。デジタルの力をレバレッジしたさまざまなプレーヤーが数多く台頭しており、多くの業界で競争環境が激変する事例はもはや珍しいことではなくなりつつある。そうした環境下で多くの企業がデジタル・トランスフォーメーションの実現に向けて活動しており、デジタル・ケイパビリティの獲得を狙ったM&Aも活発に行われている。前回(2017年8月9日)は「最初の壁:買収先ターゲットをどう見つけるか」と題してデジタルM&Aの買収ターゲット企業を探索・発見するためのアプローチについて説明した。今回は買収ターゲット企業を発見し、買収検討を進めることに合意した後のビジネス・デューデリジェンスにおいて、どのように対象会社のケイパビリティを見極めるのかを論じる。

従来型M&AとデジタルM&A~ビジネス・デューデリジェンスにおける違い

 過去10~15年間において日本企業も多数のM&Aを行ってきた。金額ベースで見てもその規模は大きく伸びており、90年代以前とは比較にならないほどM&Aは日本企業にとっての重要な戦略オプションとなっていることがわかる。2017年は件数ベースで過去最高に達しており、2018年も1~3月のペースはすでに前年比30%超えという状況である(図1)。

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出所:MARR Online 「グラフで観るM&A動向」

 近年の日本企業のM&Aテーマをあえてひと言でくくると、「グローバリゼーション」である。国内市場の縮小を背景に多くの日本企業がアジアや欧米の企業を買収し、成長が期待されるグローバル市場でのカバレッジ拡大を図ってきた。

 こうした近年の日本企業によるM&Aの多くは、地域的なカバレッジ拡大を狙いとする一方で、対象事業領域は同業またはその周辺領域というパターン、いわば「クロスボーダーの同業買収」が主流であった(本稿では、こうした従来の主流M&Aを以下、便宜的に「従来型M&A」と呼ぶ)。

 ストラテジック・バイヤーによるM&Aでは通常、対象会社スタンドアローンの価値に加えてシナジー価値の実現を狙うが、従来型M&Aでの主な対象会社は対象国ですでに一定のプレゼンスを持つ「できあがった会社」のケースが多く、「スタンドアローンあってのシナジー」という扱いが実態である。そのため「対象会社の既存ビジネスのキャシュフローを持続・拡大できるか?」が最優先の問いになり、対象国固有の市場特性や当該市場における対象会社の既存製品・サービスの位置づけ、顧客基盤、販売実績などの情報に基づく現状ビジネスの持続性評価に主眼が置かれる傾向が強い。

 これに対してデジタルM&Aの狙いは対象会社が持つデジタル・ケイパビリティを獲得し、それをレバレッジして新たなビジネスモデル、オペレーティングモデルを構築することである。一部の例外を除いてデジタルM&Aの対象会社は比較的小規模なスタートアップが多く、買い手企業の期待は対象会社のスタンドアローン価値よりも対象会社が持つケイパビリティのレバレッジによるシナジー価値の最大化に向けられる。このためデジタルM&Aでは対象会社が持つ「ケイパビリティ」の評価が特に重要となる。

 アクセンチュア自身も直近5年間(2013~2017年)に81社を買収しており、そのうち34社がいわゆるデジタル企業である(図2)。クライアント向けM&Aプロジェクト支援の実績に加えて、アクセンチュア自身の多くの実践を踏まえて以下ではデジタルM&Aにおけるケイパビリティ評価のアプローチを説明していく。

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出所:アクセンチュア

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