Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

AI人材の不足を解決するのは
情報学を専門としない人材へのリカレント教育だ

1

AI人材の不足が産業界で大きな課題となるなか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による特別講座「実データで学ぶ人工知能講座」(AIデータフロンティアコース)が東京大学で開講した。AI技術の応用を期待される社会人を対象とした同講座には、定員を大きく上回る応募があったという。代表を務める東京大学情報理工学系研究科の萩谷昌己教授にAI人材の育成・裾野拡大に向けた取り組み、リカレント教育(社会人の学び直し)の重要性などについて聞いた。

全11回の講義・演習でAIの即戦力を育成

――2018年4月に開講した「実データで学ぶ人工知能講座」について伺います。

東京大学 情報理工学系研究科 理学部情報科学科 教授                                             萩谷 昌己(はぎや まさみ)                      1980年、東京大学理学部情報科学科卒業。1988年、京都大学理学博士。1992年、東京大学理学部助教授。1995年から現職。専門は計算モデル、ソフトウェア検証、分子コンピューティング、分子ロボティクスなど。情報処理学会の情報処理教育委員会委員長として,文系・理系の学部学科を包含する情報学の定義の策定にも携わる。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による特別講座の一環として、東京大学と大阪大学が協力して開講した社会人向けの講座です。大阪大学が大学院レベルの講座を提供するのに対し、東京大学では、より裾野を広くして学部レベルの基礎的な講座を提供しています。

 実は、2017年10月にパイロットプログラムを開講していて、当初20名の定員に対し、143名の応募があり、そのなかから43名を受講者として選定しました。社内で具体的な課題に直面している方や企業におけるAI導入を任されている方を優先して選定したのですが、年齢別では30歳代が最も多く、次いで40歳代、20歳代。50歳代の方も数名いらっしゃいました。

 この4月からスタートした本講座も基本的な趣旨は変わりません。AI分野の人材不足に対応するために、即戦力人材を育成することが大きな目的です。AIの活用には、基礎となるコンピュータサイエンス(CS)の知識とスキルが不可欠との認識から、最初にCSプレースメントテストを実施し、受講者のレベルを判定します。その結果に応じて、CS補講を受けてもらい、AIの講義・演習へと入っていきます。講義・演習は毎週土曜、全11回にわたって行われ、最後は発表会です。

 講座は、AIの概論から始まって、機械学習の入門、ニューラルネットワーク、ディープラーニングなどを必須科目として学び、その後、AIの代表的な応用分野である自然言語処理とコンピュータビジョン(画像処理)の2つの分野で演習を行います。講座専用にGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を搭載したサーバーを導入し、これを演習で利用しています。

 本講座の受講生は50人。昨年のパイロット講座から引き続き受講したいという10名を含め、当初予定の倍ぐらいの人員を選定しました。こちらはパイロット講座よりも若い人が中心となっています。

――パイロット講座も本講座も定員を上回る募集がありましたが、それだけ企業の関心は高く、AI人材の不足が大きな課題として認識されているということでしょうか。

 印象としては、実際にAI活用にすでに取り組んでいる企業の方やAI活用の課題をお持ちの方が1つ。もう1つは、AIブームのなかで、いまはやりの技術を調査するために、上司から「勉強してこい」と派遣されてきた方です。業種別ではメーカーの方が圧倒的に多いのですが、それ以外にも、金融やインフラ・公益企業の人も見られます。

 知識・スキルのバックグラウンドとしては、情報系の出身者の方もいますが、それ以外の方、メーカーなどの生産現場で研究開発に携わってきたが方が多いようです。情報系の出身ではないが、なかにはCSやAIについて独学で勉強してきたという方もいらっしゃいます。

次のページ  情報教育そのものが普及していないことが課題»
1
Technology 関連記事
Going Digital インタビュー」の最新記事 » Backnumber
世界のエグゼクティブが注目する話題の新シリーズEI Emotional Intelligence  知識から感情的知性の時代へ 待望の日本版創刊
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS