仮想通貨の普及で
銀行が不要となる日は訪れるのか

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仮想通貨は既存通貨の代替となるのだろうか。これは、特にビットコインが浸透する中で常に耳にする問いである。本記事は、現実的な視点から、仮想通貨の技術が今後の銀行や決済システムに及ぼす影響を考察する。


 あなたは、ビットコインの価値をドルに換算、あるいはドルの価値をビットコインに換算することはあるだろうか。

 新たな仮想通貨への期待が膨らんでいるものの、それが国の通貨を不要にすると真剣に考える経済学者は少ない。彼らの予測は、ほぼ正しい。なぜなら、従来の通貨は、実際にかなりよい仕事をしているからだ。

 米ドルとその他の準備通貨は、交換媒体および価値保存手段(通貨の2大機能)として、歴史的にうまく機能してきた。これに対し、ビットコインとその派生通貨は、どちらの面でもまともに機能しておらず、私たちが知っている通貨を破壊などしないと思われる。

 しかし、それは新たな技術が金融システムに大規模な破壊的変化をもたらさない、ということではない。伝統的な経済学者(そう、この呼称は本記事筆者らにも十分当てはまる)は、通貨(「物」)と決済技術(「手段」)との重要な相違を、往々にして無視してきた。この混同が生じるのは、金や紙幣といった旧式の通貨には「物」と「手段」との区別がない、という事実があるからだ。支払う際には、単にドル紙幣や金貨を売り手に渡せばよい。

 だが今日、現金で支払うことはどんどん少なくなっている。その代わりに、取引の際には、購入する商品やサービスの対価として、デジタルのコードを転送するのが通常だ。そして新規参入者は、通貨をデジタル化する技術を通じて、金融システムを変えつつある。

 このような変化は、すでに発展途上国で見られる。誰もが銀行口座を持てるわけではない国々である。

 たとえば東アフリカでは、携帯電話会社が銀行を飛び越えて決済仲介者となっている。換金可能な携帯電話クレジットで、利用者が互いに送金できるようにしているのだ。これが意味するのは、人々が携帯電話クレジットをデジタルの交換媒体として利用可能であること、そして、決済のインフラがモバイルネットワークとなったこと、である。

 もちろん、先進国では、ほとんどの消費者がデビットカードやクレジットカードで銀行口座にアクセスしている。つまり、彼らはすでにデジタル通貨の送金に携わっている。

 このため、米国や欧州の伝統的な銀行は(その電子決済技術は、時に洗練度も信頼性も低いかもしれないが)、破壊的なイノベーターによる影響を被りにくい。さらに、先進国で銀行と直接競うためには、自社の技術が既存のインフラに匹敵することを実証し、銀行として認められるための規制上の難関をすべて通過しなければならない。

 ビットコインは、この状況下で参入した。

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