個人の知に限界があることは、
けっして不幸ではない
――書評『知ってるつもり 無知の科学』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第78回は認知科学者のスティーブン・スローマンとフィリップ・ファーンバック著知ってるつもり 無知の科学を紹介する。

知らないことを知らない、人間の残念さ

「なぜ人間は、ほれぼれするような知性と、がっかりするような無知をあわせ持っているのか。たいていの人間は限られた理解しか持ち合わせていないのに、これほど多くを成し遂げてこられたのはなぜなのか」

 本書『知ってるつもり 無知の科学』は認知科学者の二人が、人間の知性の働きの研究結果から、上記の疑問に答えていく1冊である。

 人間は自分が思っているより無知である。本書では、実際には物事のほんの一端しかわかっていないのに、全体を理解しているという錯覚を人間が抱いていることが、あらゆる事例によって示されている。

 改めて突きつけられなくても、私たちが人間の知には限界があることを痛感する場面は多いと思うかもしれない。身の周りに存在するあらゆる機器――たとえばスマートフォンの操作方法は分かっても、それがどのようなメカニズムで動いているのかは説明できない。

 しかし、本書を読むと、自分が知らない・説明できないのは、最新機器のみならず、いつも使っているトイレのメカニズムから社会システムまで、実は知っているつもりで説明できないことで溢れていることを痛感させられる(本書で紹介されたある研究では、人間の知識ベースは1ギガ程度という結果が出ている)。

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