デジタル時代に乗り遅れないために、
取締役が掲げるべき4つの基本理念

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技術革新、新種のリスク、新たな競争者がめまぐるしく変化する現状に、多くの取締役が困難に直面している。ここでは、取締役がデジタル時代に乗り遅れないための4つの方法をご紹介する。

「ソフトウェアが世界を飲み込んでいる」――デジタル界の老練な起業家マーク・アンドリーセンは数年前、こう警句を発した。

 今日、多くの取締役が、このメッセージの意味を痛感している。彼らは、勢いのあるデジタル企業が、市場を支配してきた企業をおびやかす様を目の当たりにしてきた。そして、我々が関わっている企業の取締役のおよそ3人に1人が、自社のビジネスモデルは、今後5年間で廃れるだろうと考えている。

 しかし、2015年に行なった、私たちマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、自社の取締役会がデジタル施策を推進していると回答したのは17%の取締役にすぎず、さらに前の調査では、自社事業のデジタル化に伴う変化を完全に理解していると回答したのは、わずか16%だった[注1]。私たちの調査では、デジタル担当取締役や最高デジタル責任者などの雇用、シリコンバレーの視察、デジタルに関する分科委員会の設置などが、変化する環境への取締役からの共通した反応である。

 こうした反応に価値がないとは言えないが、多くの場合、取締役が直面している「リテラシー格差」を埋めるには不十分であり、これこそが問題の本質なのだ。

 従来型の資産管理とマネタイズに精通した熟練の取締役の経験では太刀打ちできない、新たなタイプの問題が出現している。自社の業界だけでなく、隣接セクターからも出現してくる新規競合の成長、シリコンバレーや他のハイテク業界での急速な資金調達サイクル、技術の流動性、顧客が求めるデジタル体験、従来とは異なるリスクの出現に後れないようにするのは厄介な責務であり、多くの取締役が困難に直面している。

 取締役が責務を果たすためには、デジタルに関する問題に縮こまらず、関与の仕方を変える必要がある(図表参照)。取締役には、技術革新と、それが持つ自社とバリューチェーンのさまざまな面への潜在的な影響について、より理解することが求められる。さらに、デジタルがいかに既存の戦略を無効にし、新たな戦略を促すかも重要である。また、組織をまとめてガバナンスが効いた運営をするために、迅速かつ有効な方法をとることが必要である。さらに、決定的に重要なのは、デジタルに強い人材を引き寄せる手段を探すことである。

 今日のデジタルによる創造的破壊の影響範囲は広く、対応には長期的なビジネスモデルと、短期的な投資が必要である。私たちが知るCEOと取締役の中には、このことを踏まえ、取締役はみずからをデジタル変革の究極の推進者として見なさなくてはならない、と主張する者もいる。さもなければ、CEOは、デジタル対策の課題を後継者に委ねることになってしまうだろう。

図表

 経営陣にとって少なくとも、取締役会はデジタル分野について強力な論争相手である必要がある。経営陣は、市場を再構築する積極的な取り組みに関する種々の困難について考えている。また、企業がデジタル時代に向けて正しい事業展開をしているのかについても、同様である。以下に、企業にとって必要なデジタルエンゲージメントを取締役に提供してもらうための、4つの基本理念を紹介する。

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