新任取締役が問うべき12の質問

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一般的に、新任取締役向けの就任プログラムだけでは、事業について詳細かつ十分な理解を深めるには足りない。新任の取締役はオーナーシップをもって着任し、12の重要な質問をすることで独自のデューディリジェンスを計画・実施するべきだ。

はじめに

 新任取締役向けの通常のオリエンテーションは、会社を知るための社内ミーティング数回、ガバナンスの基礎を習得するための1〜2日の社外プログラムを組み合わせたものだ。残念ながら、本格的な知見を提供するには、社内ミーティングはあまりに簡略であり、社外プログラムはあまりに標準化されていることが多い。その結果、取締役が果たすことになる役割に向けて、効果的な準備を整えていることはまれである。

 世界各地の取締役会メンバー1600人を対象に行った2011年のマッキンゼー・クォータリー調査では、回答者の半数以上が、初期研修には改善の必要があったと述べた。3分の1は、自社業界のダイナミクスや自社が直面するリスクについての知識が限られている、または、ないと感じていた。4分の1は、自社の価値創出の仕組みすらよく把握していなかった。(図表1参照)

図表1

 新任取締役を教育するうえで、従来と異なるモデルが必要であることは明らかであり、プライベートエクイティが、そのヒントの 1つになるかもしれない。

 プライベートエクイティ企業の取締役は、デューディリジェンスを活用し、標準化された学習プログラムでは到底及ばないほど深く、企業を理解する。また、もっと多くの時間、1〜2日ではなく5〜10日をかけて、より幅広く経営責任者、顧客、アナリスト、業界専門家と関係を持つ。その結果、自身の着任および専門性の質をより高く評価するのである。

 新任取締役は独自のデューディリジェンスを計画・実施しながら、率先して行動し、オーナーシップをもって着任すべきだ。手始めとなる方法の1つは、次に挙げる12の重要な質問をすることである。

 断っておくが、これらは新任の取締役が1回目の取締役会で質問するものではなく、企業の文書に目を通し、経営トップと1対1の対話をする際に念頭に置いておくべきものだ。

 また、これは取締役の法的責任に関する包括的な指針を示したものではない点に留意されたい。法規制のコンプライアンス、および周辺の問題の詳しい情報は、各国の関連規則を参照していただきたい。

取締役会の役割と関係

 1. どんな強みをいかすことが期待されているか?

 会社の分析に踏み込む前に、新任取締役は、自分にあって他のメンバーに欠けている可能性があるスキルを含め、取締役会で期待されている役割を知ることが有益だ。

 取締役の選考委員会はしばしば、特定の機能または分野の空白を念頭にポジションを埋める。ある取締役会はリスク、財務、オペレーションはよくカバーしているが、法律の専門知識に欠けていたり、主要子会社の1つが属する業界のダイナミクスを理解していなかったりすることがある。

 手始めとなる1つの方法は、自分に何を求めているのか、会長とCEOに単純に質問することだ。取締役会の弱点はどこにあり、その解決に自分に何ができるのか?

 2. 取締役会の力関係にどの程度まで関わり、貢献するか?

 取締役会のエンゲージメントの程度は、じつにさまざまだ。たとえば、企業戦略に関して、取締役会は戦略とその背景について情報提供を受けるケースから、CEOおよび上層部と一緒に戦略を積極的に策定するケースまで、範囲は広がりうる。こうしたダイナミクスを早い段階で読み取っておくことが大切だ。

 CEOは取締役会と距離を置いているのか、あるいは、その指導を積極的に仰いでいるのか?取締役会のメンバーは定期的に経営部の意見に反対意見を述べているのか、それともコンセンサスを志向しているのか?ダイナミクスの原理を理解すれば、新任取締役は、どの程度までそれに沿うべきか決めることができる—ただし多くの場合、新しい取締役会のメンバーは、より独立した視点をもたらすために採用されている。

 一般的なトレンドとして、事実、取締役会のメンバーは以前よりはるかに関与度を深めている。マッキンゼー・クォータリーによる最新調査では、会社の課題――なかでも戦略、人材、およびリスク――にもっと多くの時間を費やすことが取締役会の成果を拡大する最大要因である、と取締役たちは述べた。平均的な取締役は1年当たり28日を費やしているが、38日が理想的であると考えている(訳注:最新の調査では、このギャップは10日から5日まで縮小してきている)

 3. カギとなる人脈をどのように積極的につくっていくか?

 新任取締役が知っておくべきもう1つの重要な点は仕事仲間、つまり会長とその他の取締役会メンバー、そして重要な経営幹部である。とりわけ会長は、新任取締役の戦略を実現させるための支援者作りや、目に見えない力関係の存在に気づく助けとなりうる。

 他の取締役会メンバーにはしばしば、望ましくない権力を行使する派閥が存在するが、こうした力関係を知ることで、新取締役はできる限り迅速に能力を発揮できるようになる。また経営幹部の中には、取締役会での通常の会議を超えて、組織の実態を教えてくれる1〜2人の「同志」がいるかもしれない。ほとんどの場合、新任取締役が積極的に築くべき人脈は3〜4人であり、堅苦しくないディナーでの対話から始めるとよいだろう。

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