完璧主義による自滅を防ぐ方法

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何事にも完璧を求める姿勢は、ポジティブな特徴としてとらえられることが多い。だが実際には、自分自身のみならず、周囲にも大きな負の影響をもたらすことがあると筆者はいう。完璧主義の欠点とは何か、どうすれば完璧主義から脱却できるのか。本記事では、その具体的方法論が示される。

 極端な傾向の例に漏れず、完璧主義はときに両刃の剣になる。 何事にも高いレベルを求める努力家という特徴は競争社会で抜きんでる助けとなり、その徹底したこだわりは、時間の経過とともにさまざまなスキルを向上させる。また、細部まで目配りするため、つまらないミスをある程度未然に防ぐこともできる。

 これらの長所に加え、「小さな欠陥が大惨事を引き起こす」という恐怖心が、完璧主義者をさらなる完璧主義へと追い立てる。しかしその一方で、ミスのないパフォーマンスを目指すことには、大きなマイナス面もある。

 もし、自分や自分の部下が完璧主義的な傾向に悩んでいるのなら、職場における完璧主義がいかに自滅を招くかを思い出すといいだろう。以下の5つの例から、目先のことにとらわれて全体像を見失うという、完璧主義に共通する問題点に気づくはずだ。

完璧主義者が陥りがちな5つの落とし穴

 完璧主義は、ともするとプラスの要素のように感じられるかもしれないが、たいていはその逆である。すべての完璧主義者が次の5つの行動を取るとは限らないが、この5つすべてが非生産的な活動だ。

 意思決定や行動を起こす前に悩みすぎる

 完璧主義者は、いかなる状況下でも最高最善の選択をしようと意欲を燃やす。たとえそのような必要がない場合でも、である。これが、意思決定の停滞を招きかねない。

 たとえば、ボブのケースを見てみよう。ボブは作業を効率化する新しいツールを購入する予定だが、否定的なレビューのいっさいない完璧な製品を探したいと考えた。どんなに優れた製品でも何かしら否定的なレビューはあるものだと理屈ではわかっているし、想定している利用方法に否定的なレビュー内容は妥当しないにもかかわらず、ボブの決意は変わらない。

 結局、彼は自分で設けた高い基準に囚われ、どれを購入するかを決めるのに数週間を費やした。その間、作業は効率化できなかったうえ、同僚からは「優柔不断」「要領が悪い」というレッテルをはられることになった。

 サンクコストを過度に気にする

 些細な過ちをいつまでも引きずる傾向のある完璧主義者は、回収不能なサンクコスト(埋没費用)を出してしまった場合、何としてでも取り戻そうとする。

 アンドレアは月額制のサービスを契約したが、実際にはほとんど利用していなかった。しかし彼女は、数ヵ月間にわたって支払った費用を回収したいという感情的な欲求を満たすため、「倍の元を取る」という新たな目標を定め、利用料を払い続けた。マーカスはカスタマーサービスに電話をかけ、問題を10分間かけて説明した。明らかに、窓口担当者では解決できない問題だ。それでもなんとか成功を収めたいと、さらに20分間を費やして担当者に訴え続けた。

 このように完璧主義者は、気持ちを切り替えるまでに、生産性の低い作業に過度な時間を割いてしまいがちである。

 失敗を避けるために挑戦も避ける

 完璧主義者は、新しいことには完璧に準備して取り組みたいと考える。そのため、昇進や昇格の機会を逃しがちである。

 アートは、「会議で発表するためには、パブリックスピーキングの講座を受講する必要がある」と考えている。そんな講座を受ける必要は特になく、しかも受ける予定も現実にないにもかかわらず、である。結局、アートはせっかくのチャンスをふいにしてしまう。

 自分の高い基準を周囲に押しつける

 たいていの場合、完璧主義者が極めて厳格な基準を課すのは、自分自身に限られている。だがまれに、完璧主義者が周囲にも同じ高い基準をクリアするよう求めることがある。これは特に、結果が完璧主義者本人に直接跳ね返ってくる、グループプロジェクトでよく見られる。

 チームでプレゼンを準備していたランジェイは、あと一息で完成というタイミングで大量の手直しを提案し、仲間との間に溝をつくってしまった。手直しの内容は大掛かりなものではなかったが、疲労しきって一刻も早く家に帰りたいチームメンバーにとって、ランジェイの提案は「余計な仕事を増やされた」だけだった。

 同僚のあら探しをしたり、多くを求めすぎたりすることは、相手との関係性を傷つけるだけでなく、付き合うだけで一苦労という印象を周囲に与え、社会的に孤立してしまう弊害を生む。

 欠点やミス、失敗をいつまでも引きずる

 完璧主義者がどんなに小さなミスもしないよう、たゆまぬ努力を重ねる理由の1つは、一度失敗してしまうと、それをいつまでも引きずる性格ゆえだ。

 前述のアンドレアは、利用しないサービスの利用料をいつまでも払い続け、ランジェイは不本意なプレゼンの出来について延々と後悔し、思い詰める。これを心理学用語では「反芻(はんすう)」と呼び、これから起こるかもしれないことではなく、すでに起こってしまったことに対して過度に考え込むネガティブな思考を表す。

 反芻は、現状に不釣り合いなほど感情的ストレスを増大させ、イライラや抑うつを引き起こすとともに、パフォーマンスの低下や人間関係にも深刻な悪影響を及ぼしかねない。

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