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「Employee Value」を再考する

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「モノからコトへ」「顧客」という立場での人々のニーズが変化するなかで、「働き手(Employee)」という立場での人々のニーズ変化も同様に起きている。企業は「働き手」が働くコトや働く場に何を求めているか、つまり“Employee Value(EV)”をより深く理解し、その対応力を高めていかないと、優れた人材を惹きつけ獲得し続けることは難しい。“Employee Centric”にEVをとらえ直す方法を考察する。

労働市場の変化:自己実現を求めるWill志向の働き手の増加

 人々の「働くこと」に対する考え方が大きく変化している。今後、働くことに自己実現を求める“Will志向の働き手”がより増加すると思われる。

 「世のなかはモノからコトへ」と言われて久しいが、モノが溢れることで機能価値が飽和し、もはや人々はモノの獲得に対して無関心化しているとまで言われるようになってきている。そのなかで人々が求めているのは「コト」である。求めるモノを手にすること(Have)を超えて、体験(Do)や自己実現(Be)へと人々のニーズが変化している。それは「顧客」という立場での人々のニーズ変化だけではない。「働き手(Employee)」という立場での人々のニーズ変化も同様だ。

 実際、海外先進主要国(米国・英国・ドイツ・フランス・オーストラリア・日本)を対象とした『Worker Values Index』では、実は約10年も前から、働くことの価値としてEmotional ValueとRational Valueは同じくらい重視されていたことが明らかになっている。これは海外先進主要国だけでなく、日本においても同様傾向が確認された(図1)

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出所:Gallup Analysis, Gallup World Poll Data, Accenture Analysis; Numbers may not add up due to rounding.

 いま、国内のビジネス分野で書籍『ティール組織:マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』がヒットしている(記事掲載時点でAmazonの実践経営・リーダーシップの売れ筋ランキングで1位)。現在の優良大企業の多くが採り入れている、目標管理、計画策定、KPI管理といった仕組みをもって組織統制する達成型の組織モデルではなく、自己実現(組織における自発的な目標設定と実行)が個人の行動の源泉である進化型の組織モデル(=ティール組織)に対する国内世間の注目が集まっていることも、上記傾向の表れではないだろうか。

 そして、今後のミレニアル世代(1980年代から1990年代に生まれた世代)やジェネレーションZ世代(1990年代後半以降に生まれた世代)の増加により、この変化はますます進行すると考えられる。ミレニアル世代と現シニアリーダーシップの価値観の違いを調査した『Mind the gaps:The 2015 Deloitte Millennial survey』から、最も価値観の違いがあるのは「従業員の尊重・自己実現(Employee's well-being)」であることがわかる(図2)

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出所:Mind the gaps The 2015 Deloitte Millennial survey

 全米でベストセラーとなった『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(日経BP社)の著者であるサリム・イスマイル氏もまた、過去のインタビューにおいて、ミレニアル世代が行動を起こす動機は「自分たちが何をやりたいか」でありミレニアル世代は自分自身のMTP(野心的な変革目標)と企業のMTPがフィットするかどうかを重視すると述べている。

 想像していただきたい。2020年にはミレニアル世代が世界の労働人口の3分の1以上を占め、ジェネレーションZ世代を足すと半数を超える“マジョリティ”となると言われている。自己実現(Will)を追い求める働き手がマジョリティとなった時、企業の働き手と向き合う姿勢はいまのスタイルのままでよいのだろうか。

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