組織をじわじわと蝕む
「不在のリーダーシップ」の有害さ

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 不在のリーダーシップがそれほど有害であるなら、これについて、ビジネス書であまり目にすることがないのはなぜだろうか。私が最近耳にした、有名なロースクールの学部長に関する話題を考えてみよう。

 評判のよい上級教職員2人が学長のもとを訪れて、彼らの上司である学部長について不平を漏らした。「彼は何もしようとしない」というのだ。学長はこう応じた。かつて、飲んだくれの学部長や、セクハラで訴えられた学部長や、資金の不正使用で訴えられた学部長がいた。だがロースクールの学部長は、何の問題も起こしていない。したがって、2人はその上司とうまくやっていくしかない――学長はそう言ったという。

 この例の学長のように、多くの組織は、不在のリーダーに対処しようとしない。他に、振る舞いが明らかにもっと有害なマネジャーがいるからだ。不在のリーダーは表向きには問題を起こさないため、組織に及ぶマイナスの影響が見つかりにくい。また、見つかった場合にも、優先順位の低い問題と見なされることが多い。

 したがって、不在のリーダーは往々にして、組織の「サイレントキラー」となる。ノーチェックで放置されて、組織における人事継承の「動脈」を詰まらせている。生産性への貢献がほとんどないまま、もっと有能な人材の要職への昇進を阻んでいるのだ。

 不在のリーダーは、許しがたい悪行に関わることはめったになく、従業員からの直訴に端を発する、倫理調査の対象となることも稀である。結果として、彼らが組織に及ぼすマイナスの影響は、ほとんどが見過ごされたまま、時とともに蓄積していく。

 あなたの組織が、選抜と昇進の優れた手法を備えている数少ない組織の1つであるならば、有能なリーダーと有害なリーダーの識別が可能だろう。だが、人材判断に長けていないとしても、両タイプのリーダーがひとたびその職務に就けば容易に見当がつく。また、彼らが組織に及ぼす結果も予測可能だ。建設的なリーダーシップは高い従業員エンゲージメントと生産性を生み、有害なリーダーシップはそれらを削ぐ。

 しかしながら、あなたの組織が不在のリーダーに気づいていない可能性は大いにある。なぜなら、彼らは耳目を集めることは何もせずに、レーダーの探知を潜り抜けて飛ぶのが得意だからだ。しかし、そのマイナスの影響はしつこく残り、ゆっくりと自社をむしばんでいるおそれがある。

 リーダーシップ人材をめぐる戦いは現実のものであり、優秀なリーダーたちを擁する組織が勝利を収める。自社の管理職における不在のリーダーを検証し、彼らに対して何らかの手を打つことにより、人材マネジメントの備えを向上させることができる。おそらく競合他社は、この問題を見過ごしているか、上述の大学の学長のように、何も対処しないことを選んでいるだろう。

 不在のリーダーに対して「何もしない」ことは簡単だ。不在のリーダーの誰かに、尋ねてみればよい。


HBR.ORG原文:The Most Common Type of Incompetent Leader  March 30, 2018

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スコット・グレゴリー(Scott Gregory)
ホーガン・アセスメント・システムズのCEO。幹部人材の選抜、能力開発、コーチングの専門家。職場における人格に関する講演を多数行っている。

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