Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

ITはスケールメリットの獲得ツールから
再び企業を強くする武器に変わった

――デジタル時代のエンタープライズ・アーキテクチャ

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近年の伝統的大企業において、主としてスケールメリットを追求するためのツールとして活用されてきたIT。そのため、「いかに良いものを、確実に、安く手に入れるか」という発想の下でIT投資が行なわれてきた。しかし、デジタル社会化が進む中、ITの活用が激変する競争環境・ルールの中での勝敗を左右するのみならず、時にその先駆的活用が新たなビジネスの扉を開くまでに重要性が高まっている。デジタルビジネスで急成長を遂げるスタートアップが続々と登場しているのはご存知のとおりだ。伝統的大企業においても、魅力的なデジタルビジネスを創造していけるかどうかが存続を左右するカギとなっている。しかしながら、スケールメリットの追求で巨大化・硬直化したシステムでは、機動的なビジネス展開は難しい。改めて時世にあった企業競争力を獲得するためのIT投資やIT資産に再転換するにはどうすればいいのか。

デジタル化が事業の
ライフサイクルを縮めている

田中佑貴
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
シニア・マネジャー

東京大学教養学部卒。2006年アクセンチュア入社。テクノロジー戦略グループの中心メンバーとして、エンタープライズ・アーキテクチャ、テクノロジー戦略を専門とする。 金融機関を中心とした大企業に対し、ITアーキテクチャやテクノロジー組織の観点でのデジタル・トランスフォーメーションや、先端テクノロジー起点での事業立案等のプロジェクトに従事。

――社会のデジタル化によってビジネスはどんな変化を遂げたのでしょうか。

田中 伝統的大企業の従来型ビジネスモデルは、スケールを獲得し、その結果として事業効率が高まる経験曲線効果によって競争優位を築いていくというものでした。その世界では、ITはスケールメリットを極大化させるための手段として、これに多大なる貢献をしてきました。

 一方で、デジタル社会化が進むことによるマージナルコストの低下が、規模の経済性や経験曲線効果の効用を低下させ、資本集約による競争優位性を希薄化させています。そのような中で、ITを顧客との接点構築や情報獲得にすることで、新たなビジネスの展開と成長を模索する企業が増えてきました。こうしたプレイヤーは、データ集積が提供サービス価値を向上させる性質のビジネスを志向しています。先駆的に顧客情報シェアを掌握することでサービス価値を高め、それがさらなる顧客増加と情報集積を誘引するといった、「先行者総取り」の構造を作り上げ、新規参入に対する参入障壁を構築しています。

 資本集約が競争優位を築く時代から、デジタル社会化の進展に合わせて順次生み出され続ける情報の掌握力と活用力が競争優位を築く市場に移り変わり、従来型ビジネスモデルが時代遅れになっているのです。その結果として、短期間で急成長するアセット・ライト企業の創出や、企業の事業ライフサイクル短期化を巻き起こしています。

 これは、S&P500企業の入れ替わりを見ても明らかです。2000年以降、52%がリストから消滅し、バランスシート規模が必ずしも大きくない企業が増加するとともに、頻繁に入れ替わるようになっています(下図)

Source: Innosight analysis based on public S&P500 data sources https://www.innosight.com/wp-content/uploads/2016/08/Corporate-Longevity-2016-Final.pdf

 IT投資に立ち返って考えると、直近20年の一大潮流であった、産業別ベストプラクティス(業界ごとの個別最適化)を追い求めるスタイルは通用しなくなりつつあるといえるでしょう。

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