「これからの組織」を探究しよう

『ティール組織』鼎談:嘉村賢州×佐宗邦威×入山章栄(前編)

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2018年1月に発売後、各方面で話題を集めたティール組織。組織のあり方について新たな考え方を提示する本書は、日本企業にとってどのような示唆があるのか。日本における第一人者の嘉村賢州氏、戦略デザイナーの佐宗邦威氏、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄氏が、次世代組織モデルの可能性を語り合った。その様子を2回に渡ってお届けする(撮影:和田剛、構成:山下智也、場所:SmartNews)※3/8開催の出版記念イベントの内容を再構成しています。

人生の転機、ティールに出合う

入山章栄(以下、入山):今日は『ティール組織』解説者の嘉村さん、推薦者の佐宗さんとの鼎談ということで、私は一読者としておふたりに色々な質問を投げかけていきたいと思っています。まず、嘉村さんは数年前から「ティール」を知っていたんですよね?

嘉村賢州(かむら・けんしゅう)
場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome's vi代表理事
コクリ! プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)。京都市未来まちづくり100人委員会 元運営事務局長。集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する。その中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、日本で組織や社会の進化をテーマに実践型の学びのコミュニティ「オグラボ(ORG LAB)」を設立、現在に至る。

嘉村賢州(以下、嘉村):2015年ですね。それまで10年くらいファシリテーターとして組織変革に携わっていたのですが、自分の道に悩み、思い切って1年間休暇をとったんです。その時に本書の原書と出合い、翌年にティールの実践者や研究者が集まる初めてのカンファレンス「Next-Stage World」に参加しました。

入山:そこでティールを体感されたんですね。

 佐宗さんはデザインシンキングが主戦場だと思いますが、なぜティールに関心を?

佐宗邦威(以下、佐宗):そうですね、まず新卒で入ったP&Gを辞めた後に『学習する組織』という本に出合って「組織」への関心が高まり、次にソニーに転職して「デザイン」に出合いました。それから、この「組織」と「デザイン」を融合できないかと思いビオトープという会社を立ち上げた後、『ティール組織』の原書を知ったのです。考え方に共鳴し、嘉村さんに誘っていただいて、第2回の「Next-Stage World」のカンファレンスに参加した、というのが私の経緯です。

組織のパラダイムを俯瞰する圧倒的スケール

佐宗邦威(さそう・くにたけ)
株式会社ビオトープCEO
東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&G、ヒューマンバリュー、ソニー(株)クリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わった後、独立。B to C消費財のブランドデザインや、ハイテクR&Dのコンセプトデザインやサービスデザインプロジェクトを得意としている。『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由 』(クロスメディア・パブリッシング)著者。京都造形芸術大学創造学習センター客員教授。

入山:お二人とも原書が発売されて間もない頃から知っていたとは、まさに先見の明ですね!佐宗さんはこの本を読んでみてどう思われましたか?

佐宗:そうですね、圧倒的なスケールで人類の進化を解き明かした『サピエンス全史』という本を思い起こしました。『サピエンス全史』が、「人類はこれまでどのように発展し、これからいかに進化するか」という問いに迫っているのに対して、『ティール組織』は、「組織はこれまでどう発展を遂げ、これからいかに進化するか」に迫っている。

入山:そのスケール感、わかります。私は読み始めてまず驚いたのが、冒頭の組織の発達段階の図です。著者が「人間の意識は時代とともに変化する」ことを前提に議論しているのが特徴的で、「進化心理学」という人間の感情や行動の進化を解明する学問領域のことを思い出しました。

歴史的変遷からみた人類のパラダイムと組織の発達段階(『ティール組織』日本語版付録より)

オレンジ、グリーン、そしてティールへ

嘉村:この本は、ケン・ウィルバーというアメリカの思想家が、東洋と西洋の膨大な知識と体験をもとに意識レベルの発達段階を示した「インテグラル理論」がベースとなっています。

入山 章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール 准教授
1996年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーに就任。2013年から現職。Strategic Management Journal など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。主な著書に『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)、『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)がある。2014年から4年間、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューにて「世界標準の経営理論」を連載。

入山:そうですよね。人間の意識の変化を、組織に適用した点が実に画期的だと思いました。例えば、極めて不安定な時代に社会を機能させる仕組みの一つとして宗教が台頭し、その宗教に適した組織形態として「順応型(アンバー)」が出現した。その次は産業革命が起き、テイラーの科学的管理法に適した組織形態として「達成型(オレンジ)」が登場したと。

嘉村:その次が、従業員を家族や仲間と捉えて、コンセンサスや人間関係を重視する「多元型(グリーン)」。そして「進化型(ティール)」と来るわけなんですが、実はグリーンとティールって結構混同しがちなんです。

入山:そこをぜひ聞きたいです。個人的には、いまはグリーンからティールへの移行期にあるような気がしています。

嘉村:ティールと従来型組織の違いは、未知の領域に飛び込めるどうかと言われています。キャンプファイヤーを例にすると、焚き火を囲むと仲良くなって一体感が生まれますね。でも重要なのは焚き火のまわりに広がる暗闇なんです。暗闇にはモンスターが、あるいは宝物が潜んでいるかもしれない。そういう未知の世界への冒険に飛び出していける信頼関係を築けるか。これが、ティールへと発達するための挑戦だと思います。

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