赤の他人に自宅を使わせる
Airbnbは、なぜ成立するのか
――書評『競争と協調のレッスン』
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第75回はコロンビア大学ビジネススクール教授のアダム・ガリンスキーとペンシルベニア大学ウォートン校教授のモーリス・シュヴァイツァーの共著『競争と協調のレッスン』を紹介する。
友が敵へ、敵が友へ、関係はすぐ変わる
短期の宿泊場所を探す人と、自宅を貸したい人をつなぐ民泊ネットビジネス、Airbnb(エアビーアンドビー)は、なぜ成り立つのだろうか。赤の他人に自宅を貸すことに、不安はないのだろうか。
この疑問を解消するのは、借り手と貸し手の相互評価システムである。宿泊が終わった時点で、借り手と貸し手はお互いを評価する。その評価点の累積が、信用を醸成する評判をつくる。
借り手の場合、利用回数とともに、自分の評価が低くなると、次の機会に泊めてくれる貸し手を見つけにくくなる。貸し手の方は、評価が低くなると、宿泊希望者が減っていく。この評価システムがあるから、借り手も貸し手も、行動を自ら律するようになる。
配車サービスやネットオークションなども同様で、近年急成長している個人間のビジネス(C2C)は、ネットを活用した評価システムによって、個々の信用が築かれることで成立している。
ところで、こうしたビジネスの基本にある構造は、昔から変わらない。商売で成功するには信用が第一で、それは多くの他人からの評価によって形成される。違いは、昔はそれが噂話によって、今はネットによって、つくられ、流布されるということである。
信用が取引関係に協調をもたらし、ビジネスを成功に導く。しかし、上記の評価システムのような根拠がないのに、他人を信用すると、実は相手は競争相手であったり、相手から裏切られたりして、ビジネスが失敗に終わることもある。
上記のように、本書は、ビジネスの根元にある、協調と競争という、相反する複雑な関係を、いろいろな角度から解いていく。
人と人は、友から敵へ、敵から友へ、関係は常に変わりうる。その変化の過程を、心理学、経済学、社会学、政治学、さらには脳科学など、様々な分野の研究結果を活用して、分析していく。この手法は、近年の経営学では多く使用されており、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューを読まれている方には馴染みがあるのではないだろうか。

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