AI Shift ―― The Business Transformation for AI ――

AIのポテンシャルを
生かすも殺すも人間次第

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考える作業も
AIがやってくれるように

 また、私たちは情報を得て自分で考え、行動しています。これまでは主にその情報収集の部分と行動の部分だけをテクノロジーがサポートしてくれていました。考えて判断するのは人間なわけです。それゆえより良い判断をして、結果としてより良い行動をするためには、私たちは世界についてよりよく知る必要がありました。

 しかし、AIの時代になってくると、考えるところもAIが代わりにやってくれるようになります。世の中のことをよく知らなくても、効率のいい行動をチョイスできるようになる。とても便利になるわけですが、AIの判断を過信しないことが重要でしょう。

 私たちは、スマホやPCを通して様々なサービスを無料で利用できる代わりに、データを提供しています。そして、何をクリックしたか、どういう動画や広告を見たかが逐一収集され、それが類型化される。その結果、タイプ分けやグループ分けがされ、お金はいくらまでしか貸せない、保険料はいくら、おすすめはこの商品、と決められていくのです。

 ですから、私たちはAIが提案するサービスが本当に適切なのかを、自分で目利きする能力を持たなければいけません。それと同時にAIによって自分がどのように類型化されているのか、なぜそのような類型化をされたのかを知ることができ、場合によってはそのような類型化に異議を唱えることができるような仕組みも必要でしょう。

 これまで述べてきたように、AIの判断は常に客観的というわけではありません。でも、私はAIを否定しているわけではなく、生活をとても便利にしてくれるのは事実ですし、むしろ誰よりもAIの健全な発展に期待しています。大切なのは「正しい認識を持ってAIと向き合うこと」。つまりそのAIがどのような目的で作られ、どのような仕組みで動いているのか、どのような限界や欠点を持っているのか、そのAIで得をするのは誰で、搾取されるのは誰かを知ることです。AIのポテンシャルを生かすも殺すも人間次第といえるでしょう。

「倫理観」をもったAIは実現可能!?

――AIの今後の課題は何でしょう?

 先に紹介したAIを利用した採用でも、本来はなぜ採用したのか不採用にしたのかを、明確に説明できなくてはいけないはずです。しかし、現在の機械学習システムで、人間がわかるように判断の理由を説明するのは非常に難しい。そこをいかにできるようにするかが今後の大きな課題です。

 AIのアルゴリズムを作るときには作成者の意図が反映されるのですが、その結果については、絶対的な客観性があるような錯覚をしてしまうことが多い。社会全体としてAIについての適切な理解を促進していかなければなりません。また設計者はAIの出した結果を吟味し、アルゴリズムが適切であるかを絶えず見直すようにしていかなればなりません。

 さらに、倫理をAIに実装するというような研究も近年進められています。人間のような倫理観をAIが持つかどうかは分かりませんが、しかし倫理を配慮して設計されたAI、人間が大事にしている価値、例えば公平性、人権、尊厳、自律性、創造性などを促進してくれるようなAIが実現できれば、本当に素晴らしいことですね。

(構成/河合起季)

 

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