CEOは持ち株の権利確定が迫ると、
投資を控えて株価を上げようとする

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経営者は、自社株で個人的に儲けるために自社の投資を削減することはあるのだろうか。本記事で紹介する米国の研究では、CEOが売却した株式数ではなく、「権利が確定する株式数」に着目したところ、短期主義が立証されたという。


 今日の企業は、短期主義に侵されているのだろうか。

 このことを示す説得力ある論調によれば、経営幹部は短期的な利益目標を達成して報酬を引き出すべく、投資を削減する。彼らをそうけしかける短期株主たちは、長期視野で企業を成長させることよりも、手っ取り早く儲けることだけを考えているという。

 長期的な投資(炭素排出量削減、大型新薬の開発、社員教育など)は、株主のためだけにとどまらない利益をもたらす。したがって、そうした活動を重視していないと企業を責める声は、もはや企業が社会に貢献していないのでは、という懸念を招くことになる。

 しかし、短期主義を責める声がどれほど広がっても、実際に短期主義がまん延しているという確かな証拠を得ることは、驚くほど困難だ。

 ある調査では、CFOの80%が、「利益目標を達成するためなら投資を削減する」と述べているが、彼らの言行は必ずしも一致していない。最近のマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、企業の長期志向を表す指数(投資規模などを含む)は、将来の長期的な株式リターンと相関関係があることがわかっている。つまり、長期志向経営には利があるということだ(「マッキンゼーのデータが立証する、長期志向経営の経済的メリット」を参照)。

 ただし、この因果関係は、あっさりと逆向きにも作用する。企業の長期見通しが悪化すると、投資を「控えるべき」となるわけだ。これは財務講座の初級で教わることであり、おそらく、マッキンゼーも顧客にそうアドバイスするだろう。

 では、短期主義は存在するのだろうか。存在するならば、その根本原因は何なのだろう。

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