熱狂者が時代をつくり、ビジネスを動かす
――書評『ファンダム・レボリューション』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第73回はスクイッシャブルの共同創業者であるゾーイ・フラード=ブラナーとアーロン M. グレイザーによる『ファンダム・レボリューション』を紹介する。

ファンダムがビジネスを動かす時代に

 私には、Jリーグ発足当時から贔屓にしているサッカーチームがある。毎年の主要選手は把握しているし、公式戦の翌日にはネットで勝敗をチェックするし、東京で重要な試合があればスタジアムで観戦したりもする。ただ、わざわざファンクラブに加入することもないし、選手のユニフォームを買って応援したこともない。選手起用に不満を覚えることもあるが、30分もすれば忘れている程度のものだ。

 一方、私とは比較にならないほど熱心なサポーターも大勢いる。毎試合のようにスタジアムに駆けつけることはもちろん、普段の練習から足を運んで選手のサインを集めたり、ユース時代から選手を応援し続けたりするのも珍しくないだろう。チームが勝てば大声で勝利を歌い、負ければ涙を流す。不振が続けば、クラブの運営責任者に自分たちの想いを伝えることもあるだろう。ときには、選手や監督に罵声を浴びせるシーンを見かけることもある。

 本書『ファンダム・レボリューション』には、後者のような熱狂的な人々がビジネスに与える影響が記されている。書名にもある「ファンダム」がキーワードであり、筆者はこう定義する。「ファンダムとは『人』を表す言葉ではない。ファンの『行動』を表す言葉だ。熱狂的な人たちが参加する、カネ儲けにならない一連の活動が、ファンダムだ」。本書では、そんなファンダムたちの実例を豊富に紹介しながら、企業にとって無視できない存在になりつつある現状を詳細に描写している。

 筆者によると、ファンダムという存在は、けっして新しいものではなく、そこには「3つの波」があるという。「ユートピアとしてのファンダム」「下克上としてのファンダム」、そして「自己表現としてのファンダム」である。現代は3つ目の段階を迎えており、SNSというテクノロジーによって、ファン同士のつながりだけでなく、企業や組織との直接的なつながりを持てるようになったことで、彼らがビジネスに与える影響力が増大したという説明はわかりやすい。

 本書には多くの事例が取り上げられている。なかでも、ファンダムの力をわかりやすく示すケースの1つが、コカ・コーラに起きた出来事である。

 コカ・コーラは、1990年代にサージという炭酸飲料を発売して支持を得ていたが、子どもへの悪影響などが懸念されたことで批判を浴びた結果、ある時期からほとんど見かけなくなったという。だが2011年、エヴァン・カーという20代の個人が復活運動に乗り出し、フェイスブックで熱心な活動を繰り広げた。「『サージ好きのグループです。力を貸して下さい』じゃなくて、『これは君の闘いなんだ。全員で力を合わせて目標に向かおう』って運動にしたい」というカーの言葉は、類稀なる意志力と行動力を象徴している。その結果、2014年、コカ・コーラはついにサージの再販売を始める決断を下した。

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