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AIを活用した医療を
患者自らが求める時代に

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CTやMRIなどで撮影した画像をAIが分析し、がんや病気の可能性を指摘する時代が間もなくやって来そうだ。日本は米国と並ぶ医療画像大国といわれる。豊富で良質な画像データを基に開発された技術は、グローバルな競争優位性も期待される。画像診断技術の研究開発から製品開発、販売までをワンストップで手がける東大発のベンチャー、エルピクセルの島原佑基氏にAIが切り開く医療について聞いた。

ライフサイエンス×ITで21世紀を代表する産業に

――ライフサイエンス領域の画像解析技術を研究開発する東大発ベンチャーとして注目を集めています。そもそも起業したきっかけは。 

島原 佑基(しまはらゆうき)
エルピクセル 代表取締役

東京大学大学院修士(生命科学)。大学ではMITで行われる合成生物学の大会iGEMに出場(銅賞)。研究テーマは人工光合成、のちに細胞小器官の画像解析とシミュレーション。グリーに入社し、事業戦略本部、人事戦略部門に従事。2014年3月に研究室のメンバー3人でエルピクセルを創業。

 21世紀だからこそできること、新しいことに挑戦したいという思いが強くありました。学生時代は水素や電気で動く次世代の自動車をつくりたいとも考えていましたが、山中伸弥教授のiPS細胞のニュースを見て、これからは生物をつくる時代だと確信し、大学で生物学を専攻しました。

 19世紀は化学の時代、20世紀は物理の時代だと思っています。19世紀には周期表にあるほとんどの元素が発見され、産業革命の進展を支えてきました。20世紀には機械化が進み、物理学の発展による急速な工業化が私たちの生活を豊かにしてきました。そして21世紀は生物学の時代です。生命とは何かが明らかになり、生物もつくれるようになったり、治せなかった病気も治せるようになる。そこに挑戦していきたいと考えました。

 何故、生物学が最後に来たのか。それは生物が持つ情報が、化学や物理学に比べて圧倒的に膨大で、かつ複雑に絡み合っている学問だからです。たとえば、ヒトゲノムの全塩基配列が解析されましたが、人間のことがすべて理解できるようになったかというと、そうではありません。DNAからRNAが転写され、たんぱく質がつくられ、細胞小器官になって、それらが組み合わさると細胞ができて、組織ができる。組織はインタラクティブに作用もします。本当にけた違いの情報を扱わなければならないのです。

 一方でITの進化により、これらの膨大な情報を解析できるようになりました。医療、製薬、農業などのライフサイエンスは、ITとの掛け算によって21世紀を代表する産業に成長するといっても過言ではありません。

 学部では遺伝子工学を学び、遺伝子組み換え生物の開発も行いましたが、正直まだ少し先の話だと思いました。もう少し身近で、すぐに社会に貢献できるようなテーマを求めて、大学院では画像解析を研究しました。ITとライフサイエンスの両方ができる人材はほとんどいないということで、我々に対するニーズは高いものがありました。これはビジネスになると思い、研究室のメンバーと会社をつくりました。

――起業する前には、サラリーマンも経験されています。

 学生時代に起業する選択肢もあったのですが、悪い人にだまされそうなイメージがあって(笑)、社会人経験とグローバル経験の2つを求めて、当時、最短で成長できそうなグリーに就職しました。ところが、入社した途端に、グローバル展開を縮小する方向に転換したので、わずか1年でしたが退職し、別のIT企業に転職します。そのときに副業で始めたのが、いまのビジネスです。大学のインキュベーションプログラムを受けて、2014年3月の卒業と同時に創業しました。

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