Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

優れたカスタマーエクスペリエンスの提供が
B2Bビジネスの競争優位になる

1

アクセンチュアの最新調査では、B2Bビジネスにおいても、カスタマーエクスペリエンス(CX:Customer Experience、顧客体験)が競争上の重要な論点になりつつあることが明らかになった。現代のB2B企業は、顧客企業のビジネス上の成果に貢献する、優れたCXの実現を目指していかなくてはならない。そのためには、顧客を含めた複数のステークホルダーを巻き込んだエコシステム(共存・共栄の仕組み)を構築し、自社の枠に留まらない価値の生産を「指揮」していくことが求められる。

顧客体験が競争論点になりつつある

 企業間の商取引においても、カスタマーエクスペリエンス(以下CX)が競争上の重要な論点になりつつある。アクセンチュアの最新調査「B2BCX―企業間取引における顧客体験調査2017」*1では、B2B企業の販売・顧客サービス部門の幹部1,350人のうち、実に90%がCXを戦略的優先順位の上位に位置づけていると回答している。また同時に75%が、今後2年以内にCXの重要性はいまよりさらに高まると予測している。では、ここで言うCX、特にB2BビジネスにおけるCXとは具体的には何を指すのか? B2B企業が「優れたCX」を実現するには何が必要か? 本稿ではB2Bビジネスの新たな競争論点であるCXについて論考していきたい。

 CXとは、一般的に企業と顧客とのあらゆる接点におけるインタラクションの結果として、顧客が得る一連の知覚や感情であると定義される。もう少し噛み砕くならば、製品・サービスの利用接点だけでなく、認知・購買のシーンや、利用後の評価・共有の段階まで含む、購買ファネル全体における経験を通して、顧客が得る価値のことであると言える。具体的には、製品のプロモーションから得る印象や共感、製品選択時の心地よい購買体験、問い合わせに対する迅速な回答や、製品・サービスの利用を通じて得られる副次的な成果や満足感などの総体が「顧客体験」である。

 元々はB2Cビジネスにおけるマーケティング概念の一つであり、1999年のシュミットによる「経験価値マーケティング」のなかでその基本的な考え方が提唱された。先進国を中心とした市場の成熟化に伴い、製品やサービスそのものとしての差別化が困難になるなかで、CXに対する注目は年々高まってきている。さらに近年では、テクノロジーの急速な進化によって、顧客を個で捉え、製品やサービスの直接接点以外でも個別のコミュニケーションが可能になりつつあることを背景に、CX重視の流れはますます加速している。

 前述の通り、そのトレンドは、いまではB2Bビジネスにも及んでいる。いまやB2B企業の71%が、自社の顧客企業はB2C並みの対応(素早い応対や、チャネル横断での一貫した体験など)を求めていると回答している。あるリーディングハイテクメーカーでは、生産性の低い管理業務を削減し、代わりに、顧客応対チャネルの増強、離反の可能性がある顧客に対する丁寧な対応やオファー提示、顧客個々の状況を踏まえたアップセル・クロスセルの働きかけの促進に取り組むことで顧客体験の改善を図り、結果として4.9%の売上げ向上を達成している。*2

 顧客の要求が高まる一方で、すべての企業が顧客の求める体験を十分に提供できているわけではない。実際、いま現在、顧客の求める体験を十分に提供できていないと考えている企業は、全体の約半数(48%)に及ぶ。このギャップは日本においてさらに大きい。B2C並みの体験を求めている顧客が増加していると回答した割合は、調査対象国中で最も高い78%であった一方で、顧客の求める体験を提供できていないと答えた割合も65%と、対象国中最も高くなっている。

写真を拡大
出所:アクセンチュア

 では現状を脱却し、競合する他社に先駆けて顧客が求める「優れたCX」を実現するために、B2B企業はいま何に取り組むべきか。製品・サービスの提供のみならず、End-to-Endでパーソナライズ化された顧客サポートを充実させることは、最初のステップであろう。そして、それにも増して重要な視点となるのが、顧客企業のビジネス上の「成果」に着目した価値の提供である。

次のページ  顧客の顧客は何を求めているのか?»
1
Customer Experience 関連記事
Going Digital オピニオン」の最新記事 » Backnumber
世界のエグゼクティブが注目する話題の新シリーズEI Emotional Intelligence  知識から感情的知性の時代へ 待望の日本版創刊
定期購読