Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

エクスポネンシャル・オーガニゼーション
――飛躍的組織とは

「シンギュラリティ大学」創業ディレクター サリム・イスマイル氏に聞く

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破壊的変化への対処法を教えてくれる
MBAプログラムはどこにもない

――日本企業の幹部は、先の3つ目のグループ同様、「破壊的変化が起きると思いながらも、どのような手を打てばよいのか悩んでいる」方が多いように思います。

 これまでの経営学では、破壊的変化やその対処法について学ぶことはできません。それが理由の1つといえるでしょう。世界中どこを探しても、それを教えてくれるMBAプログラムはないのです。今のリーダーシップや組織構造は、小幅な変化の直線的な成長を想定した経営を行なうためのもので、時代遅れになっています。そんな20世紀の組織のためのマネジメント手法は忘れ、新しい知識と手法を学ぶことが必要です。

 ですから、コンサルタントの役割は今後ますます重要になるでしょう。日々技術は進歩していますから、どんな専門家でも企業に勤めたその日から時代遅れになる。サポートしてくれる存在が不可欠です。

 では具体的に、企業で破壊的変化を取り込むにはどうすればよいのか。その方法の1つが、企業の一部門を分離独立させ、別会社として経営させるスピンオフです。例えば、ネスレはカプセル式コーヒーを専用コーヒーメーカーにセットし、エスプレッソコーヒーを抽出する独自サービスを展開する「ネスプレッソ」という別の組織を作り、成功させました。

 ただ、うまくいかなかった例もあります。米国の大手スーパーマーケットチェーンはネットビジネスで新組織を4度立ち上げ、4度目でようやく成功しつつあります。しかし、アマゾンがここまで大きくなった今、巻き返すのは容易ではないと考えます。

 そうならないためにも、私達は経営者に対して、10週間の集中訓練プログラムから成る「ExO Sprint」を提供しています。破壊的テクノロジーの影響や動向、飛躍的企業の特徴、さらには既存企業が破壊的、革新的、かつ適応力の高い飛躍的企業に変革するための実践的フレームワークを学び、既存組織のマインドセットを2年先まで飛躍させます。

――日本固有の課題はあるのでしょうか。

 日本だけではありませんが、この先は企業組織内で世代間の対立が大きな課題になるでしょう。2000年代に成人あるいは社会人になるミレニアム世代が行動を起こす動機は、「自分たちが何をやりたいか」です。会社をすぐに辞めてしまうのも、自分のやりたいことに合わないからです。ですから、ミレニアム世代は自分自身のMTPと企業のMTPがフィットするかどうかを重要視します。一方、これまでの日本人は、家族や会社、キャリアに対する義務を重要視してきました。このギャップが、組織に不協和音を生み出しています。

 米国では、こうした問題はほとんどありません。いい意味でも悪い意味でも、もともと社会的な義務は米国では存在していないようなものですから。

破壊的に変化する世界には
ビッグチャンスがある

――では最後に、日本の経営者にメッセージをお願いします。

 どんな業界でも絶対に安全ではないことを理解し、行動を起こさなければいけません。自動車、金融などはとくにそうです。10年後には現在と同じ形態でのリテールバンキングは存在していないかもしれません。

 しかし、破壊的変化の世界にはビッグチャンスがあるのも事実です。第二次世界大戦後、奇跡的な経済成長を成し遂げたように、日本にはこの変化を乗り切るパワーがあると信じています。アグレッシブに取り組むなら、そこにチャンスは必ずあるのです。

サリム・イスマイル
ExO Worksの共同創業者兼会長。2010年から数年間、シンギュラリティ大学の共同創ディレクターとして学内のプログラムを統括し、現在はグローバルアンバサダーを務める。前職ではヤフーのバイスプレジデントを務め、ヤフーの社内インキュベーター、ブリックハウスを立ち上げた。著書の『シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法』(日経BP社)は全米でベストセラーとなった。

牧岡宏
アクセンチュア 常務執行役員 戦略コンサルティング本部 統括本部長

東京大学工学部卒業、MIT経営科学修士修了。丸紅、ベイン&カンパニーを経て2014年にアクセンチュアに入社。

(構成/河合起季 撮影/宇佐見利明)

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