Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

デジタル化と分散化で
エネルギー産業は劇的に変わる

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デジタル技術は社会や産業、ビジネスモデルを大きく変えてきたが、その波がいよいよ日本のエネルギー産業にも訪れようとしている。太陽光・風力発電の能力や蓄電技術が飛躍的に伸び、これら小規模な分散エネルギー資源が広く浸透することが予想されている。こうしたデジタル化や分散化の流れは、エネルギー産業にどのような変革を引き起こすのだろうか。『エネルギー産業の2050年Utility3.0へのゲームチェンジ』の著者で、アクセンチュアの戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクター、伊藤剛氏に聞いた。

デジタル化で
エネルギーの小売業が消える!?

伊藤 剛
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
素材・エネルギー部門統括
マネジング・ディレクター

東京大学法学部卒業後、大手シンクタンクを経て、2012年よりアクセンチュア。主に制度設計、企業・事業戦略、組織設計、マーケティング・営業戦略、新規事業立案等の領域で経験を積む。

――著書では、これからの日本の社会を動かす変革ドライバーとして「5つのD(Depopulation/人口減少、Decarbonization/脱炭素化、Decentralization/分散化、Deregulation/自由化、Digitalization/デジタル化)」を挙げています。なかでも、デジタル化と分散化はエネルギー産業への直接的な影響が大きいと思われますが、まず、デジタル化によって何がどう変わるのかを教えてください。

 簡潔にいうと、エネルギーに対するエンドユーザーの向き合い方が変わります。

 IoTを中心としたデジタル技術の進展によって、製品を売るのではなく顧客体験価値を売る、「モノ売りからコト売りへ」とビジネスモデルが変わり始めています。このGoing Digitalのサイトでもアクセンチュアがいくつもの事例を紹介しています。

 これを、電気にあてはめて考えてみましょう。私たちは、食べ物のように電気そのものが欲しいのかというと、それは違います。欲しいのは、例えばエアコンを動かすことによって得られる「快適な空間」という体験であって、電気の消費体験ではありません。ですから、世の中が「モノ売りからコト売りへ」と転換していくと、顧客体験を得るための手段であるガソリンなどのエネルギー商品を消費者が直接購入する機会は減っていきます。

 じつは、この動きはもうすでに世の中で起きているのです。私は最近、自家用車からカーシェアリングに切り替えました。クルマを所有していたときはガソリン代や車両税、保険料を払っていましたが、今はカーシェアリング代だけです。私が欲しかったのはガソリンではなく、クルマで移動する体験。それを提供してくれるのが、カーシェアリングの事業者で、ガソリン代はその事業者がまとめて払ってくれるというわけです。

 こうしたサービスは、B2Bの世界からB2Cの世界に順次拡大していくと思われます。B2Bの世界では、自社製品を機器売りではなく、As-a-Service型で提供する事業者が増えています。B2Cの世界でも、例えば全自動衣服折りたたみロボットのような新たな大型家電がAs-a-Serviceで提供されるかもしれません。こうしたサービスが世の中に広がると、手段としてエネルギーを買う必要はなくなり、本当に欲しいモノ・コトだけを買えば済むようになります。

 そうなると、今までBtoCやBtoBだったビジネスモデルは、BtoBtoXになる。間のBはシェアリング事業者であったり、モノ売りからコト売りへと転換したメーカーだったりするかもしれません。この事業者がエネルギーの購入者になり、エネルギー小売業者から見た顧客になります。

 このようにデジタル化の進展は、エネルギーの小売事業を根底から変える、あるいは消滅させる可能性をはらんでいるのです。

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