優れたリーダーになる秘訣は、
「いま、ここにいる」ことである

1

部下のために多くの時間を費やしているのに、どうにも信頼を得られない感じる人はいないだろうか。どれだけ物理的な時間を共にしようとも、心ここにあらずの状態で、相手と真摯に向き合っていなければ、それも仕方ない。優れたリーダーは、マインドフルネスで「いま、ここにいる」状態を保つことが必須であり、それが部下のパフォーマンスに直結するという。


 数年前、我々は、ある多国籍製薬会社の取締役と一緒に仕事をした。

 リーダーシップと部下との関わりという点において、彼の評価はいつも低かった。変わろうと努力しても、何も効果が出ないようだった。

 次第にフラストレーションが高まり、彼は、直属の部下とどれだけの時間を過ごしているかの記録も取り始めた。そして、よくない評価を受けるたびに、そのデータを取り出して叫ぶのだった。「でも、一人ひとりとこんなに長い時間を過ごしているんですよ!」

 事態が好転したのは、彼が毎日10分間のマインドフルネスのトレーニングをするようになってからだ。2〜3ヵ月すると部下は、彼が以前よりも関わりを持つようになってくれ、より仕事をしやすくなり、やる気を起こさせてくれると感じるようになった。

 彼は結果に驚き、大喜びした。だが、もっと驚いたことがあった。部下と過ごした時間の記録表を取り出してみたところ、平均で21%短くなっていたことがわかったのだ。

 以前の彼とは、どこが違うのか。彼は実際に部下たちの前に「いた」のだ。

 それまでは、誰かと同じ部屋にいても、必ずしもその人のためにいたわけではなかったことを、いまでは彼も理解している。他の活動に没頭していたり、別のことを考えたりしていたのだ。そして何より、誰かが話しているときに彼が聞いていたのは、自分の「内なる声」だった。彼が心ここにあらずの状態だったため、部下は話を聞いてもらえないという不満を抱いていた。

「内なる声」とは、今経験していることに対する、自分自身のコメントである。たとえば、「いい加減、話すのをやめてほしい」とか、「彼女が次に何を言うか、わかっているぞ」とか、「前にも聞いた話だな」とか、「ジョーは私のメッセージに返事をくれたかな」といったつぶやきだ。

 他の人と真に向き合い、有意義なつながりをつくるために、人は自分の内なる声を黙らせ、目の前の人に集中する必要がある。それには、よりマインドフルな状態で「いる」ことが役立つ。

 近刊予定の我々の著書The Mind of the Leaderに向けた研究の一環として、我々は、1000人を超えるリーダーを対象に調査を行った。その結果、よりマインドフルな状態で「いる」ことが、部下と関わり、よりよいつながりをつくり、パフォーマンスを高めるための最適な戦略であることが示された。

 このことは、他の研究でも実証されている。ベイン・アンド・カンパニーによる2000人の従業員を対象とした調査では、リーダーとしての特性33項目のうち(説得力のある目標を創出すること、考えを明確に表現すること、インプットを受け入れられること、など)、マインドフルな状態でいる能力(集中力ともいう)が最も肝心であることがわかった。

 また、リーダーのマインドフルネスと、部下の幸福感とパフォーマンスとの間には、直接的な相関関係があることも研究から示唆されている。言い換えれば、リーダーが部下のために「いる」ほど、部下のパフォーマンスは高まるのだ。

 以下に、我々の研究に基づき、日々を過ごすなかで「いま、ここにいる」のに役立つヒントと戦略をいくつか示そう。

次のページ  「いま、ここにいる」を実践する4つの戦略»
1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文セレクション
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking

特別企画