AI Shift ―― The Business Transformation for AI ――

AI画像解析はどこまで進化し
医療現場をどのように変えるのか

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国立情報学研究所(NII)が設立した「医療ビッグデータ研究センター」がAI(人工知能)による医療画像解析技術の開発事業をスタートさせた。現在、4つの学会をパートナーとする4つのプロジェクトが進行中だ。合計10万症例以上を収集し、機械学習と画像認識というAIの主要2領域を活用して「AI医療画像解析」の技術を創出する。具体的にどのような技術が生まれ、医療現場をどのように変えるのだろうか。

医療画像情報を安全な環境で
収集する「クラウド基盤」を構築

佐藤真一
国立情報学研究所 医療ビッグデータ研究センター センター長

東京大学大学院工学系研究科を修了し、1992年学術情報センター助手。米国カーネギーメロン大学客員研究員。2003年国立情報学研究所ソフトウェア研究系助教授。2004年情報メディア研究系教授に就任。2017年11月より現職

――はじめに、「医療ビッグデータ研究センター」を設立した経緯や目的を教えてください。

 日本医療研究開発機構(AMED)が研究開発事業の課題を募集した際、NIIと3つの学会が組んだ研究提案3件が採択されました。そこで、これらの事業を体系的にサポートしていくため、2017年11月1日に設立した組織が「医療ビッグデータ研究センター」です。

 パートナーとして共に開発を進めるのは、日本消化器内視鏡学会、日本病理学会、日本医学放射線学会。さらに、2017年夏に同様の追加公募があり、日本眼科学会と組んで応募した研究開発課題も採択されました。ですから、現在は4つの研究開発事業を進めています。

 もともとNIIは、東大の文献所蔵データを管理する文献情報センターからスタートしています。その後、文献情報を集めてデータベース化し、全国の大学に提供してきました。現在は、全都道府県を100Gbpsの超高速回線で結んでいる学術情報ネットワーク「SINET5」を構築し、大量のデータを管理するためのセキュリティや通信のための「VPN(仮想プライベートネットワーク)」などの技術を確立しています。この学術情報ネットワークには、国立大学86校すべてを含む全国の大学や研究機関など857機関が加入しています(2016年末現在)。

 こうした技術を生かし、今回の研究開発事業では、各学会によって匿名化された医療画像情報を安全な環境で収集し、研究者がクラウド上でデータ解析を行なえるようにする「医療画像ビッグデータクラウド基盤」を構築しました。大学や病院から各学会のサーバーへ、各学会のサーバーから医療画像ビッグデータクラウド基盤への医療画像情報の転送に、前述した「SINET5」と「VPN」の機能を活用しています。結果的に、大量の医療画像データの安全な管理と転送が可能になっています。

 いま開発を進めているのは、こうして収集された医療画像ビッグデータをAIで解析するための技術です。具体的にいうと、画像や音声などのデータの分類方法をコンピュータに学ばせて分類精度を高める「機械学習」と「画像認識」というAIの主要2領域を活用して「AI医療画像解析」の技術を生み出します。

 これまでの学術研究とSINETの構築・運用などの事業の両面で得られた知見を生かし、医療の質の向上に貢献できる研究開発を進めていきたいと思います。

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