最新の研究から読み解く、
男女の待遇や振る舞いの違い

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男女平等を推進する取り組みは前進しているものの、いまだ不十分である点は否めない。働く女性にとっては、それが大きなハンディになることも少なくないだろう。実際には、どんな影響を及ぼしているのだろうか。2017年に最も読まれた米HBR記事群から、女性に関する研究報告を記した6編を精選・要約してお届けする。


 読者の方はご存じのことと思うが、弊誌HBRは新たな研究に基づく記事を多く提供している。

 2017年に最も閲覧・シェアされた記事の中には、女性に関する研究を取り上げたものが含まれる。より具体的には、男性と女性では、職場での扱われ方や振る舞いにどんな違いがあるのかに関する記事だ。そこから6編を要約し、以下にご紹介しよう。なかにはテニスコートという「職場」を取り上げたものまである。

 1.オフィス調査で明らかになった、職場における男女間格差の実態

 ●問い

 なぜ女性は男性に比べ、高い職位に就くことが少ないのか。女性は男性よりも、自身を指導・支援してくれるメンターの数が少ないからだろうか。管理職と直接話す機会が少ない、あるいは経営幹部と積極的に話す姿勢が弱いからだろうか。

 ●検証方法

 ある1つのオフィスで働く数百人の従業員を対象に、Eメールと会議スケジュールのデータを4ヵ月にわたり分析した。うち100人には、ソシオメトリック・バッジ(社員証ほどの大きさで、センサー内蔵)を着けてもらい、各人の振る舞いを追跡。動き、他のバッジとの距離、会話時の声量と声色などを記録した。

 ●結果

 男性と女性の振る舞いに、違いは特に見られなかった。接触した他者の人数も、経営幹部と過ごした時間の長さも同程度で、自分の時間の使い方も似ていた。他者との会話時間も、オンラインと直接対面の両方において、男女ともに同じであった。にもかかわらず、女性は昇進できず、男性は昇進していた。

 ●結論

「筆者らの分析によれば、同社で男性と女性の昇進割合が異なる原因は、行動ではなく、性別による扱われ方の違いにある。したがって、女性の行動を変えようという主張、たとえば“リーン・イン(一歩踏み出す)”などは、より大きな問題を見失わせるおそれがある。ジェンダーの不平等は行動の違いに基づくものではなく、バイアスによるものだからだ」

 スティーブン・ターバン(ピープルアナリティクス企業ヒューマナイズの元データサイエンティスト)、ローラ・フリーマン(ヒューマナイズのデータアナリスト)、ベン・ウェイバー(ヒューマナイズのCEO。MITメディアラボの客員研究員)

 記事全文(邦訳)はこちら

 2.独身女性が直面するキャリアと結婚のトレードオフ

 ●問い

 異性との結婚市場では、仕事の成功につながる活動は好意的に見られないのだろうか。

 ●検証方法

 ビジネススクールの新入生355人(男性241人、女性114人)に対し、大学院のキャリア支援センターがアンケートを実施。仕事条件の希望(報酬、労働時間、月間の出張日数など)を尋ねた。さらに、自身のリーダーシップ能力とキャリア上の野心についても自己評価してもらった。

 ●結果

 被験者の中の独身女性に、「回答を見るのはキャリアカウンセラーのみ」とあらかじめ伝えた場合、独身女性と既婚女性の回答は似通っていた。

 一方、独身女性に「回答はキャリアカウンセラーとクラスメートに読まれる」と伝えておいた場合、独身女性の回答における希望給与は低くなり(平均で13万1000ドルが11万3000ドルに減少)、出張日数も14日から7日に減った。週間の希望労働時間は4時間減り、仕事上の野心も控えめになった。

 ●結論

「こうした知見を総合すると、独身女性は結婚を意識するがゆえに、キャリア追求に役立つ行動を控える傾向があることが示唆される。そして、そうした考慮は、労働市場で性別によって差が生じる一因となっている可能性がある。

 学校教育や最初の職業選択に関する決断(高校で高等数学を選択しよう、エンジニアリングを専攻しよう、起業家になろう等)は、人生の比較的早い段階で行われる。そのとき、ほとんどの女性は独身である。こうした決断は、労働市場において長期にわたる影響を及ぼすだろう」

 レナード・ブルシュタイン(シカゴ大学経済学助教)、トマス・フジワラ(プリンストン大学経済学助教)、アマンダ・パレ(ハーバード大学経済学准教授)

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 3.VCsの会話記録が明らかにした、女性起業家への偏見と差別

 ●問い

 当初の調査目的は、資金提供者の意思決定プロセスの改善を助けることであった。しかし会話データの収集と分析が進むうちに、性別の違いによるパターンが見えてきた。

 ●検証方法

 スウェーデンの政府系ベンチャーキャピタル(VC)による会話を傍聴。資金提供の最終決定を下すために、非公開の場で、対面によって行われた話し合いを観察した。2009~2010年に、ベンチャー企業から申請された合計125の案件(男性起業家から99件、女性起業家から26件)が検討された。

 ●結果

 VCの言葉遣いにはしばしば、女性に対するステレオタイプなイメージが表れていた。女性は「起業家として重要な資質」とは対極の性質を持っているかのように言われ、信用性、信頼性、経験、知識に疑義を呈された。一方、男性起業家について論じる際には、起業家としてのポテンシャルを強調するステレオタイプが表れていた。

 また、女性起業家は申請額の平均25%しか出資を受けていない一方、男性は平均52%を受け取っている。さらに、女性が出資を断られる割合は53%だが、男性による申請が却下された割合は38%だった。

 ●結論

「我々の調査はおおむね次のことを示している。言葉によるステレオタイプ化は、男性こそ起業家らしいというイメージを強める一方で、女性については起業家としてのイメージを損ねている。こうしたステレオタイプ化は、資金の分配に影響を及ぼすだけでなく、さらに重大な結果を招くおそれがある。

 政府系ベンチャーキャピタルの存在目的とは、税金を活用して、社会全体のために成長を刺激し、価値を創造することだ。したがって性的バイアスは、最も可能性を秘めた事業に税金が投資されていないというリスクを示している」

 マリン・マルムストルム(ルレオ工科大学教授)、ジーネス・ヨハンソン(ハルムスタッド大学とルレオ工科大学の教授)、ヨアキム・ウィンセント(ルレオ工科大学とハンケン経済大学の教授)

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