顧客との信頼構築がビジネスの成否を決める
――書評『サブスクリプション・マーケティング』

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「チャーンの世界」では些細な裏切りが命取りに

 筆者は、価値の育成と信頼の維持を測る指標として、チャーンレート(解約率、離脱率)を挙げている。サブスクリプションの場合、一度は離れた顧客でも、信頼さえ維持できていれば、ふたたび戻ってくる可能性もある。ただし、その重要性を頭では理解できても、実際のビジネスの現場では、意外と徹底されていないのが現状ではないか。

 たとえば、身近な経験としても納得できる例として、解約を求める顧客への対応が挙げられる。本書でも「解約には快く応じる」(p.149)で紹介されているように、一度契約したサービスを解約しようとした際、複雑な手続きを求められることは多い。これは既存顧客の信頼を失うには十分な行為である。

 私自身、あるサービスの解約ページにたどり着く方法自体がわからず、グーグルで検索したことがあった。当初は、その時点では不要になったから解約するという程度の行動にすぎなかった。しかし、そのときの不快なイメージが残ってしまったがゆえに、ふたたび必要性を感じたとしても、おそらく他社のサービスを使用することになるだろう。そのサービスのほうがお得だとしても、である。

 筆者が「チャーンの世界」と呼ぶ現代、そこで戦う企業が成功を収めるには、企業の論理はいっさい通用しない。信頼を構築するには時間がかかるが、失うのは一瞬である。そして、一度失ってしまった信頼を取り戻すことは容易ではない。顧客体験のあらゆる場面で、徹底的な顧客主義が求められる。サブスクリプション・モデルを採用する当事者として、いかに我々自身の取り組みが不足しているかを自省する機会にもなった。

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