休暇中のメールは
企業文化をたやすく破壊する

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メールの普及によって、いつでもどこでも仕事ができるようになった。その結果、休暇中にもかかわらず、当たり前のようにメールの送受信をしてしまう人も多いのではないか。筆者らの研究により、それを繰り返すことは、これまで必死に築いた企業文化を破壊することが判明した。特に、上司はみずからの影響力を自覚し、休暇中のメールを控えるべきである。


 企業は、企業文化を築き上げるのに膨大なエネルギーを費やす。価値観を定め、オフィススペースを改装し、休日にパーティやボランティア活動を企画する。だが、経営幹部や管理職がまだ理解していないことがあるようだ。企業文化を築くには時間がかかるが、破壊するのはいともたやすいということだ。それも、わずか2ステップで、気づかぬうちに成し遂げられるのである。

 ステップ1: 休暇を取る。
 ステップ2: まるで休暇を取っていないかのように仕事を続ける。

 これは、全米の企業の管理職にとっては日常の風景である。「プロジェクト:タイムオフ(Project: Time Off)」で私たちが行なった最新研究によると、休暇中に会社と連絡を取らない管理職は14%にすぎなかった。経営最上層部では、わずか7%である。その大多数は、休暇中でも少なくとも1日1回は仕事の進捗状況をチェックしている。

 あなたがこの大多数に属しているなら、安心したいからだと、おそらく思っているだろう。休暇中にも(何かの重要事態が起こっているのではないか)、戻ったときのためにも(完全に仕事から離れて休んでしまったら、はたして仕事に復帰できるのか)。しかし、「送信」ボタンを押す前にちょっと考えてみてほしい。すべてのメールが等しい重みを持つわけではない。あなたが休暇中に送るメールは、本文に加えて別のメッセージを送ることにもなる。

 休暇中の社員が会社にメールを送るたびに、企業文化は少しずつ損なわれていく。他の社員に「休暇は実は休暇ではない」と伝えているからだ。この小さな積み重ねが、いずれ多大な影響を及ぼす。この種のメールは、「私がいないとあなたは仕事が満足にできないだろう」、あるいは「私は休暇に入る前に仕事の細かな点を整理できない」というメッセージを送っているのだ。いずれにせよ、あなたの好感度や能力評価は低下する。

 どんな社員でもこの影響を起こしうるが、管理職の場合、メッセージはさらに増幅される。そして残念なことに、足元が崩れ出すまで影響を把握できない人が多い。

 休暇中には一切連絡を入れないという、真の休暇を社員が取ることに協力的でない企業文化では、組織に対する社員のエンゲージメントも、コミットメントも低い。休暇を取ることに協力的な企業文化の社員と比較すると、「会社に価値を認められていると感じる」と答える割合が低く(69%対50%)、「一個人として大事にされている」と答える割合が少ない(64%対43%)と答える割合も低い。

 その一方で、転職を考えている割合は高かった。休暇中も連絡が取れることを求める会社で働く社員の約4割が、すでに別の仕事を探している、あるいは来年は別の仕事を探すつもりだと答えた。休暇を取ることに協力的な会社の社員の場合は21%に留まっているのに対して、その割合は約2倍にも達する。

 転職の動機も、前回の求職時から大きく変化している。前の仕事を辞めた理由を尋ねてみると、予想通り、給料が増えるから、昇進の機会が大きいから、通勤の条件がよいからといったものだった。しかし、現在検討中の転職では、前述のような理由は重要度が下がっている。ポジティブな理由を求めての退社ではなく、ネガティブなものから逃げる退社となっているのだ。休暇中も連絡が取れることを求める会社で働く社員が転職を希望する理由は、会社に価値を認められていないと感じるから、ストレスフルな仕事量に押しつぶされそうだから、そして上司との関係がよくないから、である。

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