トランプ大統領はなぜいまも、
白人労働者階級に支持されるのか

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トランプの米大統領就任から1年が経ち、支持率は低迷している。しかし、白人労働者階級のトランプに対する忠誠心は、いまだ堅調だ。その要因を、トランプの選挙演説におけるレトリックから読み解く。


 トランプ大統領は、多くの白人労働者階級の有権者から根強い支持を得続けている。このことは、一部の政治評論家を当惑させている。

 クイニピアック大学による世論調査では、10月11日の時点で、トランプの仕事ぶりを支持する人は全人口の38%であったのに対し、大学の学位を持たない白人の間では55%であった。白人労働者階級からの支持率は、就任1年目を通じて堅調であったわけだ(就任翌週の支持率は52%)。

 一方で、有権者全体での不支持率は44%から56%へと上昇している。11月7日の地方選挙では、民主党がバージニア州その他で勝利を収めた。だがそれも、トランプの中核的メッセージに最も共鳴している層を動かすことはまずないと思われる。

 大学教育を受けていない、地位の低いホワイトカラーおよびブルーカラー労働者という、特定のグループからの支持がこれほど根強いのは、なぜなのだろうか。

 我々はこの問いを探るにあたり、2016年の大統領選挙戦における、トランプの弁舌を振り返ることから始めた。この時期に、上記のグループはトランプの政治基盤の中核として結束していった(本研究の完全版は、『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ソシオロジー』誌2017年11月号で入手可能)。

 我々が選挙演説に着目したのは、そこに彼の社会観、および敵と味方に関する意図が如実に表れているからだ。「敵・味方」は、彼のコミュニケーション戦略の中心であり、社会学者が言うところの「象徴的境界」あるいは「境界画定作業」の核を成す部分でもある。つまり、さまざまな種類の人々を分類し評価するために「線引き」するということだ。

 トランプの選挙演説の文言には、この境界画定作業を調査するうえでの詳細かつ広範なデータがある。トランプの大統領としての振る舞いと、支持基盤へのアピールにおいて核を成すのは、「グループ間の差異を助長し際立たせる」ことだ。このことをふまえると、線引きの検証はひときわ重要である。

 我々は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校が運営するオンライン・データベースであるアメリカン・プレジデンシー・プロジェクトを通じて、トランプの73の演説にアクセスし、コンピュータの力を借りて詳細な内容分析を実施した。その結果、彼の全般的なコミュニケーション戦略を浮き彫りにすることができた。

 まず、彼が最も頻繁に用いている言葉に着目し、それらの使われ方が好意的か否定的かを判断した。次に、トランプが選挙運動中、さまざまなグループについてどのように語ってきたか(好意的か否定的か)を調べるとともに、当選までの過程で用いた排他的な言説を検証した。特に焦点を当てたのは、アフリカ系およびヒスパニック系の米国人、「合法」移民と「不法」移民、イスラム教徒、難民、貧困層、女性、LGBTQなどへの言及だ。

 すると、リーダーとしてのコミュニケーション術における一貫したアプローチが見えてきた。

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