企業変革の実践
どこで差別化し、どの領域で勝つのか
そのための経営資源をどう捻出するか

PwCコンサルティング
ストラテジーコンサルティング(Strategy&)
パートナー
井上貴之氏

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PwCネットワークで戦略コンサルティングを担うStrategy&は、『Fit for Growth』(邦題『成長への企業変革』)を上梓した。本書では、ケイパビリティを軸に成長のためのコスト構造改革、企業変革を行う最適化の手法が具体的に述べられている。日本におけるFit for Growthチームのリーダーに、従来型のコスト削減と何が違うのかを聞いた。

植物を生長させるには
枝葉を剪定することも必要

──「Fit for Growth(成長のための最適化)」とは何かについて、あらためてうかがえますか。

TAKAYUKI INOUE
15年以上にわたり、多様な業種に対して、PMI、業務変革、ITトランスフォーメーション、全社組織変革、新規事業戦略などの支援を行う。特に大型の変革プログラムの立案と実行を多数手掛けてきた。日本における「Fit For Growth」リーダー。

井上(以下略):「成長のための最適化」とは、端的にいえば、企業のケイパビリティ(組織能力)に着目し、成長のためのコスト構造改革、企業変革を行うアプローチです。

 植物を大きく生長させるには、有望な枝に十分な栄養が行き渡るよう、余分な枝葉を剪定する必要があます。それと同じように、成長事業に振り向ける経営資源を捻出するための一連の企業変革を、我々は「成長のための最適化」と表現しています。

「成長のための最適化」では、次の3つが重要な論点となります。

(1)自社の伸ばすべき事業領域を見定め、その成長戦略に基づいて、事業ポートフォリオの見直し(枝葉の剪定)を含む企業全体の変革を行い、コスト構造、組織の最適化によって成長をより力強く推進する
(2)伸ばすべき事業領域に十分な投資を行えるように、当該領域以外のコストを大胆に削減し、そこで捻出した資金や人材を成長分野に振り向ける
(3)コストを削減すべき領域においては、現状の延長線上としてのカイゼン活動だけではなく、業務の進め方そのものを前例にとらわれずに見直し、コスト構造そのものにメスを入れる

 ──一般的なコスト削減アプローチとは、どう違うのでしょうか。

 ケイパビリティに着目し、企業の姿を再構築するところが、大きな違いです。

 どのケイパビリティが成長戦略を実現していくための差別化要因となるかを特定し、そのうえで、差別化するケイパビリティには積極的に投資を行い、そのほかの領域については、コストを削減、ないしは最適化する。つまり、ケイパビリティに応じてメリハリをつけて成長領域に投資し、そうでない領域はコストを下げるということです(図参照)。

 費目別、部門別にメリハリをつけたり、全費目・全部門一律でコスト削減を行ったりする従来型のアプローチとはまったく異なるのです。

 ケイパビリティに着目してコスト構造の見直しを行うことには、主に2つの優位点があります。

 一つは、より直接的に戦略との適合を図れることです。費目や組織を基に検討を行う場合、あくまで現状のコストに対していかに効率化を図るかという視点になりがちですが、ケイパビリティに着目すれば、戦略が導く将来のあるべき姿から逆算してメリハリをつけることになり、いわば未来志向のアプローチとなります。

 もう一つは、組織とは切り離して議論することで、社内政治のしがらみを排除し、ゼロベースでより抜本的な打ち手に繋がる議論を行うことができる点です。

 従来型のコスト削減においては、現状ありきで、コストを何%削れるかを検討するなど、小手先の議論になりがちですが、ケイパビリティの形に抽象化することで、より直接的、直感的に「あるべき姿」を追求することが可能となるのです。

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