オフィス調査で明らかになった、
職場における男女間格差の実態

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職場における男女間格差は、いまだに解消されていない。その理由として、男女の行動が異なるからだという指摘がよく聞かれるが、実際はどうなのか。筆者らがセンサー技術を活用してオフィスを調査した結果、それを証明する結果は得られなかった。男女の昇進の差は、両者の行動の差ではなく、女性に対するバイアスだと主張する。


 ジェンダー平等は、いまなお達成されていない。女性の経営幹部は少なく給与も低い管理職への最初の昇進はキャリア形成にとって極めて重要だが、それも男性と比べて可能性が低い。数々の原因が指摘されてきたが、なかでも根強いのは、男性と女性で行動が異なるからだという見解だ。

 そう聞くと、次の疑問が浮かぶ。女性と男性の行動は、本当にそんなに違うのだろうか。

 我々が調べたところ、職場における女性の行動に関する具体的なデータは、まったくと言っていいほど存在しない。これまでの研究が基礎としてきたのはアンケート調査と自己評価で、どちらもバイアスが入り込みやすいデータ収集法だ。幸い、デジタル・コミュニケーション・データの急増とセンサー技術の進歩で、職場の行動をより正確に測定できるようになってきた。

 我々は、クライアントの1つである企業において、ジェンダーによる行動の違いが、仕事の成功の度合いに影響を与えているかを調べることにした。対象とした多国籍企業には、経営幹部に女性が少ない。入社間もない層では女性が全体の約35~40%を占めているにもかかわらず、階層が上がるごとに女性の割合は減り、上位2つの層では、女性が20%を占めるにすぎなかった。

 同社の1つのオフィスで、全階層を含む数百名の従業員について、4ヵ月にわたりEメールによるコミュニケーションと会議スケジュールのデータを収集した。そのうち100人の従業員にはソシオメトリック・バッジを渡し、各人の行動をリアルタイムで追跡できるようにした。ソシオメトリック・バッジとは、大きめの社員証のサイズで、センサーによって身に付けた従業員のコミュニケーションのパターンを記録できる。センサーが測定するのは、動きや他のバッジとの距離、話(内容ではなく声量と声色)などだ。それによって、誰が誰と話しているか、どこでコミュニケーションを取っているか、会話を主導しているのは誰かを知ることができる。

 こうしてデータを収集し、匿名化し、分析を行った。個人は特定できないようにしたが、ジェンダーと地位、在職期間といったデータは保持し、これらの要因をコントロールして、条件を同じにすることが可能にした。プライバシーを守るためにコミュニケーションの内容は収集せず、誰と誰が、いつ、どれだけの時間コミュニケーションを取ったかといったメタデータだけを集めた。

 我々は当初、男性と比べて高い地位に就く女性が少ない理由に関して、仮説をいくつか立てていた。女性にはメンターが少ないのかもしれないし、管理職と直接話す時間が短いのかもしれない。男性と比べて、経営幹部に積極的に話をしないのかもしれない。

 だが、得られたデータを分析すると、男性と女性の行動に違いは、ほとんど見られなかった。女性は男性と同程度の回数コンタクトを取り、経営幹部と過ごす時間も同様で、同じ職務の男性と似たような時間の使い方をしていた。従業員がどのようなタイプのプロジェクトに携わっているのかはわからなかったが、オンラインで過ごす時間の長さや集中して行う仕事、直接顔を合わせての会話といった点で、男女間で仕事のパターンに違いを見出すことはできなかった。パフォーマンス評価でも、男性と女性は統計的にまったく同等のスコアを得ていた。それは、どの階層の女性でも同じだった。しかしそれでも、女性は昇進できず、男性は昇進していたのだ。

 特に、女性は経営幹部になかなか接することができないという仮説を裏付ける根拠は、ほとんどなかった。Eメールやミーティング、直接顔を合わせる機会などの点で、男性も女性も経営幹部との社会的なつながりは2ステップ離れていた(たとえば、ジョンがケイトと知り合いで、ケイトがマネジャーと知り合いであれば、ジョンはマネジャーから2ステップ離れている)。

 女性が重要な非公式ネットワークにアクセスすることができないのは、女性がいわゆる「ボーイズ・クラブ」に働きかけたり、彼らと時間を過ごしたりしないためだという見方もある。しかし、筆者らのデータでは、そのような傾向も見られなかった。幹部に直に接する時間の長さはジェンダー間で違いがまったく見られず、女性は職場の社会的ネットワークの中で、男性と同等に中心的役割を果たしていた。

 ここで筆者らが用いた測定基準は、「重み付き中心性(weighted centrality)」と呼ばれている。「中心性」とは、単純なレベルでは、行われつつある決定や他の従業員、そして他の「パワー・コネクター」、すなわち他人とのコンタクト回数が多い個人と、どの程度の距離にあるかを示す。重み付き中心性は、従業員がどの程度の時間、他者と会話して過ごしているかを考慮する。筆者らはこのデータを、関係の強さを示す指標と見なした。

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