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シェアリングエコノミーの台頭が
地方都市や企業、消費者に問いかけるものとは

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ウーバーテクノロジーズやエアビーアンドビーなどの進出により、日本でも認知が広がった「シェリングエコノミー」だが、さまざまな規制や既存の事業者を保護しようとする壁によって苦戦を強いられている。社会的課題を解決する有力な手法として、政府も促進に向けた取り組みを強化しているが、はたして本格化に必要なものは何なのか。情報社会学から見たシェアリングエコノミーの本質とシェアリングサービス普及のカギについて、国際大学GLOCOMの主任研究員・准教授、庄司昌彦氏に聞いた。

物欲の減退ではなく、むしろ消費を楽しんでいる

――情報社会学の立場から見たシェアリングエコノミーとは何ですか。

庄司昌彦(しょうじまさひこ)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 主任研究員・准教授
2002年、中央大学大学院総合政策研究科修士課程修了。同年より、国際大学GLOCOM研究員。2015年より現職。情報社会学、電子政府・オープンガバメント、地域情報化、社会イノベーション、高齢社会などの分野で研究を進めつつ、オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン代表理事やインターネットユーザー協会理事として社会活動との往復もしている。内閣官房オープンデータ伝道師、総務省地域情報化アドバイザー、東京都ICT先進都市・東京のあり方懇談会構成員・オープンデータ分科会長なども務める。

 農業活動が社会活動の中心にあった「農耕社会」、工業活動が中心の「産業社会」、そして情報活動が中心の「情報社会」という大まかな歴史観で捉えたときに、私たちは産業社会を生きてきましたから、効率を上げ経済価値を最大化していくことで、人々の幸福を追求する産業社会は非常にわかりやすいわけです。

 情報社会においては、必ずしも金銭的なメカニズムで人が動くとは限らず、他人からの評価や人と人とのつながりなどに価値が置かれていて、経済的価値の最大化にはつながらないといわれます。そうしたなかで発展したシェアリングエコノミーを全体的に見ると、「カネのにおいがしない」思想や心理にもとづく経済活動と考えられ、これまでの農耕社会、産業社会の価値観では理解しきれないものが現れてきている、というのが正直な印象です。

 一方、多くのシェアリングサービスは、従来からある「持たない経営」「合理化」「アウトソーシング」の延長線上にあるもので、対象となる商品・サービスが広がったという見方もできます。

 たとえば、情報的観点からエアビーアンドビーを見たとき、「これもホテル」「あれもホテル」と、人が泊まれる部屋の範囲を民家の一室や農家の物置小屋、お城など、さまざまな施設にまで広げます。次にこれらをモニタリングし、空き状況を把握して、その情報を公開します。そして、「それでも使いたい」という利用者と提供者をマッチングさせ、利用後に双方が評価します。

 クルマやタクシーもそうですし、駐車場もそうです。「1.Identify: 定義を広げ、より細かく識別する」「2.Monitor: 稼働状況を把握する」「3.Open/Share: 情報活用のため公開・シェアする」「4.Match: 多様なニーズと提供者をマッチングする」「5.Evaluate: 双方向に評価する」というプロセスが共通点として挙げられます。もの・サービスの稼働率を高め、より多様なニーズを満たすという意味では、「オンデマンドエコノミー」という言葉が、シェアリングサービスの特徴をよく言い表していると思います。

――シェアリングサービスの担い手が「ミレニアル世代」で、特に日本では“失われた20年”に生まれ育ったことから、物欲がなくなったという人もいます。

 より細かくニーズに対応できるようになったから、より効率的に資源を使っているだけです。たとえば、カーシェアリングは同じクルマ1台を10年間乗るのではなくて、週末ごとにクルマの色を変えて、とっかえひっかえ乗ることができます。そういう楽しみに変わってきたのです。これを可能にしたのがITの発展です。欲望は決して減退していなくて、むしろ新しい消費を楽しんでいるのです。

 シェアリングエコノミーの普及によってGDPが縮小するかどうかも、いまのところわかりません。クルマについては、日本では所有台数自体は増えていると聞きます。地方に行けば、依然として1人1台のクルマ社会があるわけで、一方の都市部でファッションとしてクルマをとっかえひっかえしつつ移動を楽しむことが支持されるとすれば、1人1台買うという現在のビジネスモデルは揺らぐかもしれないけれど、新たなサービスが生まれるはずです。

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