事実は小説より面白い
――書評『SHOE DOG――靴にすべてを。』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第66回は、ナイキ創業者フィル・ナイトのSHOE DOG――靴にすべてを。を紹介する。

日本との深いつながり

 アディダスやプーマをしのぎ、いまや世界最高のスポーツ用品メーカーにまで成長を遂げたナイキ。その創業者であるフィル・ナイトが、ビジネスをスタートさせた1962年から、上場する1980年までを中心に綴ったのが、今回取り上げた『SHOE DOG――靴にすべてを。』である。

 創業時はブルーリボン・スポーツという社名であったナイキが、日本のオニツカのランニングシューズ販売からスタートしたことは知っていたが、日本とここまで深い関わりがあったことは知らなかった。大学の陸上部の中距離ランナーで、ランニングシューズについての知識があったナイトは、ビジネススクールで「日本のランニングシューズの市場可能性」をリポートする。当時は馬鹿げているとも思われたであろうこのアイデアを引っ提げ、1962年にナイトは日本にやってきて、オニツカに話を持ち込むのだ。

 当時の日本について描写があるが、そこにまだ第二次世界大戦の影が色濃く残っていることに驚かされる。東京の一部には廃墟が残っていたというし、ナイトの祖母は真珠湾のことを持ち出して日本に行くことを反対したという。東京オリンピックが開催されるのはその2年後なのに、1962年はまだそういう時代だったのだ。日本と米国との間に微妙な感情があり、格差もあった時代に、日本のシューズの可能性に目を付けたナイトはやはりSHOE DOGなのだと思わずにはいられない。SHOE DOGとは「靴の製造、販売、購入、デザインなどにすべてを捧げる人間」のことだという。

 オニツカのシューズの販売は順調に伸びていたものの、オニツカとの関係には暗雲が立ち込め、契約をめぐってついには訴訟となる(これはナイキの勝訴で幕を閉じた)。また資産が少なく、創業以来、常に綱渡りの資金繰りを続けていたナイキだが、1975年には銀行との関係が悪化して最大の危機がやってくる。それを助けたのが日本の商社、日商岩井であった。 

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