GEのイメルトを退任に追い込んだ、
アクティビストという存在

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リーン・スタートアップの専門家であるスティーブ・ブランクが、ゼネラル・エレクトリックのイメルトの退任を読み解く。本記事では、長期的なイノベーションよりも株価上昇を求める、物言う投資家の影響力に焦点を当てる。


 ジェフリー・イメルトはゼネラル・エレクトリック(GE)を16年にわたり率いてきた。

 あらゆる事業分野を股にかける典型的な複合企業体であった同社を、彼は劇的に変革し、中核のインダストリアル事業群に焦点を絞った。低成長、ローテク、非インダストリアルの事業(金融、メディア、エンタテインメント、プラスチック、家電)を売却する一方で、R&D投資を倍増させた。

 イメルトはHBRへの寄稿記事「GEで切り拓いたデジタル・インダストリアル・カンパニーへの道」で、自身の在任期間を総括したが、最も大きな影響を受けた文献として2つ挙げている。2011年にマーク・アンドリーセンが『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に寄稿した記事「世界を席巻するソフトウエア産業」と、エリック・リースの著書『リーン・スタートアップ』だ。

 アンドリーセンの記事は、GEがデジタル変革を加速するうえで有益だった。同社は40億ドルを投じて、産業機械をIoTおよび解析ソフトウェアを介して、さまざまな製品に接続する「プレディックス・クラウド」を開発した。

 リースの著書によって、GEはリーン・スタートアップの方式を採り入れ、「ファストワークス」という事業開発プログラムを構築した。新規事業創出を主導するベス・コムストック副会長が、リーン方式を積極的に推進。数年の間に、すべての上級幹部たちがリーン・スタートアップの方法論を学んでいく。起業家的なマネジメント手法によって、組織文化の変革と長期的成長を促進するには、どうすればよいのか。それを知りたい現代の企業にとって、GEこそが模範だ。

 GEのイノベーションは好調だった。ところが、その勢いが今後も続くことはなくなった。

 GEの取締役会は2017年6月、イメルトの退任とジョン・フラナリーのCEOへの昇進を決定した。フラナリーはその後、イメルトの下でイノベーションを統括していた副会長らを入れ替える。これにより、コムストック、グローバルオペレーションの責任者だったジョン・ライス、それにCFOのジェフ・ボーンスタインが解任された。

 2017年10月18日付『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のGE関連記事は、こんな書き出しで始まる。「ジョン・フラナリーは、GEのCEO就任からたったの2ヵ月半だが、もう前任者の遺産を処分し始めている」。フラナリーは向こう2年間で、200億ドル相当の事業を売却することを公約。四半期業績報告の場では、こう語っている。「当社はいくつかの大きな改革を、切迫感と強い使命感をもって実行する必要があります。そのためには、あらゆる物事が検討対象になります。GEでは今後、現状維持はありません」

 こうしてリーン・イノベーションの施策に代わり、来年度末までの20億ドルのコスト削減、利益改善、そして配当金の引き上げが新CEOに委任された。

 いったい何が起きたのだろう。リーン・イノベーションとスタートアップ型のやり方は、大企業ではうまくいかないのだろうか。

 実のところ、問題はアクティビスト(物言う投資家)の存在だったのである。

 イメルトの在任期間中(2001~2017年)に、GEの時価総額は半減した。現在の株価は20年前と同水準だ。2017年現在、GE株のパフォーマンスはダウ工業株30種平均銘柄のうちで最下位に沈んでいる。

 アクティビストのトライアン・ファンド・マネジメントは2015年、25億ドル相当のGE株を購入した。これは、GEの発行済み株式の1.5%に当たる。

 トライアンは当時、次のようなタイトルの報告書を出している。「GEで変革が進行中……だが、誰も関心がない」。その実質的な意味はこうだ。投資家たちは、イメルトとGE経営陣が株価と配当金の引き上げに必要な措置を講じていないと見ており、それが理由でGEの株が過小評価されている、という主張である。

 トライアンは、GEがなすべき対策について、以下のようにかなり明確に考えていた。

・200億ドルの借金をしてGE株を買い戻し、現金を株主に還元する。
・コスト削減によって営業利益率を18%に引き上げる。
・GEは当時すでに500億ドルの自社株買いを計画していたが、その額を増やす。

 イメルトはこう考えた。上記3つを実行すれば、株価は適正になり、トライアンにとっての投資価値も上がるだろう。しかし、負債とコスト削減によって、GEの長期的なイノベーション投資を危険にさらすおそれがある、と。

 そしていま、イメルトはCEOの座を追われ、GEの取締役会にはトライアン・パートナーズが名を連ねたのである。

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