iPhone Xの価格戦略は
期待通りの成果を生むのだろうか

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先ごろiPhone Xが発売され、日本でも大きな話題を呼んだ。機能的に進歩を遂げているだけでなく、大きな変化があった。それは、価格設定である。iPhone X は1000ドルを超え、従来と比較すると大幅な値上げである。アップルはなぜ、ここまで思い切った値付けに踏み切ったのだろうか。


 アップルが新製品iPhone X(10のおしゃれな書き方)の価格を999~1149ドルと発表したことが、大々的に報道された。この価格設定は、高いという点で注目されている。同時に発表された2機種のiPhoneのベース価格がiPhone 8は699ドル、8 Plusが799ドルだから、それよりもかなり高い。さらに、1000ドルに限りなく近づき、それを超えた点でも注目に値する。4ケタの大台に乗せる価格設定は、消費者の心理的な障壁をも超えることを意味する。

 アップルは待望の新製品でなぜ、限界に挑む価格設定をしたのか。1つの重要な理由は、プレミアム価格に設定することで、消費者心理に優れた品質への期待感をもたらすことにある。

 この価格戦略は、かつてイーグルスが採用して成功を収めた戦略と似ている。イーグルスは、アルバム『イーグルス・グレイテスト・ヒッツ 1971-1975』が、いまなお全米歴代2位のセールスを誇る南カリフォルニアの人気バンドだが、1980年に解散した。そして14年間の休止期間を経た後に再結成し、新アルバムを発表すると同時に、ワールドツアーを開始した。このツアーは特別だった。メジャー・ロックバンドとして初めて、チケットの価格が100ドルの壁を超えたのだ。

 筆者はイーグルスの長年のファンであり(私の青春時代、シンシナティのラジオからはイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』が、ほぼ15分おきに流れていた)、チケット価格が100ドルを超えるのも納得できた。このバンドの不朽の名曲と、長らくミュージック・シーンの第一線から退いていたことが、ニーズに火をつけた。経済学基礎で学んだ「需要と供給」の原則に従えば、この高いニーズが高い価格となったのである。

 筆者は、自分の直観的な解釈が本当に正しいかどうかの裏付けを取るため、アーヴィング・エイゾフに電話した。エイゾフは音楽業界で尊敬を集める個人マネジャーであり、長年クライアントだったイーグルスの価格戦略の立案者でもある。エイゾフによれば、イーグルスの価格設定は需要に見合う供給というだけではなかった。品質保証でもあったのだ。「高い価格に設定することで、くたびれたオヤジの再結成バンドではなく、米国で最も偉大なロックバンドをお見せすると、ファンに約束したのです」

 これは、価格の実に見事な使い方だ。イーグルスは価格に、単に価値の表示として以上の役割を与えた。価格によって、すばらしい品質に違いないという信念を、消費者の心に植えつけたのである。もちろん、消費者に期待を持たせたら、その約束は果たさねばならない。3時間におよぶヒット曲満載のコンサートは、批評家筋から熱烈な賛辞を受け、1995年に最高の興行収入を上げるコンサートとなった。イーグルスは、約束した以上の結果を示してみせたのである。

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