食品業界の新たな課題:
「料理好き」の米国人は10%しかいない

1

食品業界はいま、岐路に立たされている。この15年、本格的な料理をする米国人の数は大きく減少し、出前や外食に頼って生活する人の数が増えているのだ。今後は、一部の人が趣味として料理を楽しむ傾向が強くなるだろう。筆者は、この大きな変化に対応するために、3つの決断を下すべきだと主張する。


 スーパーマーケットをはじめとする食品小売業界は、今後強い逆風を受けそうだ。消費者行動が長期的に変わるためである。気づいている人はまだ少ないが、食材の買い出しも料理も、長期にわたって減少傾向にある。どちらも、ほとんどの人が毎日することとしてのマスのカテゴリーから、一部の人がたまに行うニッチな活動へとシフトしている。

 私は、一般消費財企業を専門に、20年間コンサルティングに携わってきた。そしてキャリアの初期、クライアントのために、料理に関するさまざまなデータを集めた。

 このときの調査で、消費者には3つのグループがあることがわかった。(1)料理が好きでよくする人、(2) 料理が嫌いで、できるだけ料理をせずに、温めるだけの食品や食事のアウトソーシング(出前や外食)を利用する人、そして、(3) たまに料理をするのが好きで、料理したりアウトソーシングしたりと使い分ける人である。調査した当時、3グループの割合は料理好きが約15%、料理嫌いが約50%、ほどほどの人が約35%だった。

 それから15年ほど経った頃、私は別のクライアント企業のために同じような調査を行なった。すると、その数字は変わっていた。料理好きは10%まで減る一方で、料理嫌いが45%、ほどほどの人が45%になっていたのである。つまり、料理が本当に好きな米国人の割合が、比較的短い期間で約3分の1も減ったわけだ。

 数字のほかに、このデータがもう1つ示しているのは、フード専門のTVチャンネルが人気になって番組を視聴する人が増え、食欲は刺激されている一方で、料理への熱意は高まっていないことである。むしろ、フード専門チャンネルのせいで要求水準が高くなりすぎて、料理の意欲をそいでいる面がある。『アイアン・シェフ』(『料理の鉄人』の米国版)を見たあとで、自分の料理の腕に自信を持てる人が何人いるだろうか?(私の高校時代の化学の先生は、大学で半年間ヨーヨー・マの隣で演奏したあと、チェリストの道をあきらめた)。

 これが現在、食品スーパーではなく、レストランの食事に消費者が出費を増やしている一因かもしれない。米高級食材宅配サービスのブルーエプロン(Blue Apron)などの成長が大いに話題となり、また米高級自然食品スーパーのホールフーズがアマゾンの傘下に入って期待を集めてはいても、料理そのものはもう長い間、ゆっくりとだが着実に衰退の道をたどっている。飲料・食品業界のトップ25社は2009年以来、市場シェアを180億ドル減らしている。食品スーパーでは顧客の来店回数が減り、多くの小売りチェーンは長引く価格競争から抜けられず、価格は昨年1年で1.3%下落した。

 私は、料理は裁縫に似た道をたどると考えるようになった。20世紀の前半には、まだ多くの人が自分で着る服を自分で縫っていた。いまは大多数の米国人が誰かのつくった服を購入し、布地と材料を買うようなごくわずかな少数派が裁縫を主に趣味として楽しんでいる。同じようなシフトが食品業界にも起こるとすれば、チェンジリーダーや企業戦略家は大忙しになるだろう。

 伝統的な食品スーパーと大手食品メーカーは、市場シェアを減らすリスクに加え、いくつかの商品カテゴリーが時代に見合わないものになっていくリスクを抱えている。それを防ぐには、大出血しているときにバンドエイドで間に合わせようとせず、思い切ったポートフォリオ戦略を通して、切断手術を決める必要がある。

次のページ  食品業界の生き残りをかけた3つの決断»
1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文セレクション
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking