SNS時代のブランド戦略を平易に解説
――書評『「こんなもの誰が買うの?」がブランドになる』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第63回は阪本啓一氏による「こんなもの誰が買うの?」がブランドになる――共感から始まる顧客価値創造を紹介する。

ミッションとビジョンをもち
世界を変えるブランド

 個人が情報や考えを発信するSNS時代におけるブランドのあり方を、平易に論じている。発売後約2カ月で227万部発行という、今年のベストセラー『うんこ漢字ドリル』から本書の話が始まるように、ブランド論に馴染みのない読者にとっても読みやすい、一種の入門書と言える。

 前半で、製品やサービスがブランドになるために必要な要素、「ブランド・エレメント」を解説する。すなわち、①世界観、②エッセンス(提供価値)、③機能ゾーン(ブランド・ゾーン)、④カラー、⑤ロゴ、⑥パッケージ、⑦ネーミング、⑧価格、である。それぞれを、読者に馴染みのある商品を事例にして説明しているので、腑に落ちる。

 最も重要なのは、①世界観、であるという。世界観は、ブランドによって世の中にどんな変化(インパクト)を生み出したいかを示すもので、ビジョンとミッションに因数分解できる。ビジョンはその変化が実現した場合(未来)に生まれる世界を映像化したもので、ミッションはその変化をもたらすための(現在)の行動や行動指針である。これがあって初めて、ブランドが成立する、という。

 世界観を多くの人に共感してもらえれば、商品は流布していく。しかし、人はそれぞれ先入観や通説という“色メガネ”をかけている。そのままの状態では、新たな世界観をもつ商品を目の前にしても、本書のタイトル通り「こんなもの誰が買うの?」という反応になる。自社の商品に共感を覚えてもらうためには、ブランドの世界を見せる別のメガネをかけてもらう必要がある。

 それを実現できているのが、成功しているブランド企業である。グローバル大企業のネスレはその典型であると筆者は言う。例えば、母乳を飲むことが常識だった19世紀後半にネスレは乳児用乳製品を販売した。母乳を与えられない母親が我が子を栄養失調にさせないために、「飲ませても安全なのか」という当時の常識から来る不安を打ち破って買い求めている。近年では、水道水を飲むのが当たり前という常識の転換を促し、ボトル入りの水を販売し、今日の普及につなげている。それぞれの段階で新たな世界観を示し、人々のメガネをかけかえさせているのだ。そうさせる力がブランドにはある、ということである。

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