Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

フィンテック活用に向けて
日本が挑戦すべき本質的課題は何か

4

どのようなイノベーションが
日本に期待されるか

――日本の金融イノベーションは、5つのタイプのうち、どこに可能性を見出せると思われますか。

村上 隆文
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
テクノロジー戦略統括 マネジング・ディレクター

早稲田大学大学院卒業後、2002年アクセンチュア入社。主に金融機関向けにIT・テクノロジー戦略を担当。15年以上に渡り、金融業界におけるIT戦略、ITトランスフォメーション、PMI等のプロジェクトに従事。テクノロジー戦略、イノベーション戦略、IT投資戦略、ビジネス・ITトランスフォメーション、大規模システム導入等に多くの知見を持つ。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」(フィンテック研究会)メンバー。

村上 途上国と比べて、先進国の銀行口座保有率は極めて高い水準となっています。特に日本では、全国民が極めて低金利・低手数料で金融サービスを享受できる環境がすでに整備されており、支店・ATM網も充実しています。日本の預貸金利スプレッドは非常に低いため、プライシングでの事業拡大余地は極めて限定的と思われます。従って、「①アンバンクド層への金融包摂の推進」や「②中小企業・低所得・ニッチ層への金融包摂の推進」を目的とした改革の余地は小さいでしょう。

 3つめの「③金融機能のエンハンス」については、基幹系システムの重厚長大さ、規模の経済性を重視したIT投資の歴史に起因する共同化・アウトソースなど外部ベンダーへの依存度の高さ、また抜本的改革に対する投資マインドが依然として高まっていないことが課題になります。しかし、金融機関が主導できるという点では5つの中で最も可能性が大きいと考えられます。

 4つめの「④高付加価値な金融アグリゲーション」は、非金融機関の金融事業への参入に比べ、金融機関の非金融事業への参入は規制を意識せざるを得ないという大きな制約があります。規制の非対象性から、非金融機関が主導する形でのイノベーションが先行するでしょう。

 例えば、リクルートの「SUUMO」は物件情報の紹介に併せて、住宅ローン情報の紹介・SUUMO提携住宅ローンの販売を展開しています。これが日本の金融アグリゲーションでよくあるパターンです。一方、金融機関はというと、海外の金融機関によるアグリゲーションで見られるような、住まいづくりのアドバイスから物件紹介、住宅ローンの事前審査・貸出まで、住宅購買の包括サービスを手がけ、非金融収益を含めた事業は依然として見受けられません(図5)

出典:アクセンチュア

 そして、5つめの「官・民協業による社会課題解決」については、日本は国の後押し、政策的な強制力の観点で、先行国と比較した場合は保守的な姿勢となっています。

 つまり、こうしてみると、改革の余地が大きいのは③、④、⑤になりますが、④と⑤は規制との兼ね合いもあり、中長期で取り組むテーマといえます。今すぐ金融機関が主導できるのは、前述したように3つめの「③金融機能のエンハンス」でしょう(図6)

出典:アクセンチュア
次のページ  金融機能の拡張はどうすれば可能か»
Business Model 関連記事
Going Digital インタビュー」の最新記事 » Backnumber
世界のエグゼクティブが注目する話題の新シリーズEI Emotional Intelligence  知識から感情的知性の時代へ 待望の日本版創刊
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS