デザインから見つめる仕事の本質
――書評『塑する思考』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第62回は、佐藤卓氏による塑する思考を紹介する。

デザインの本質は「水のようなもの」

塑する思考』とは哲学書のようなタイトルだが、著者は長年第一線で活躍されてきたデザイナーの佐藤卓氏。ニッカ ピュアモルトや明治おいしい牛乳、ロッテクールミントガム、またNHK Eテレの『デザインあ』などを手掛けてこられた。本書では、氏のこれまでの経験を踏まえ、デザインという仕事についてさまざまに語られている。

 22章から成る本書で繰り返し語られているのが、日本における「デザイン」という言葉の受け止められ方である。デザインと言うと、飾りのようなもの、そして「特別なもの」「かっこいいもの」「おしゃれなもの」というイメージを抱きがちだが、実はデザインはありとあらゆるところに隠れており、「人の営みの中で、デザインが一切関わっていない物(モノ)や事(コト)など一つもない」と佐藤氏は言う。

 たしかに「政治、経済から医療、福祉、衣食住、教育、科学、技術、エネルギー、社会活動、等々まで、どんな分野のどんな物事にも、すでにデザインがある」し、「情報の整理整頓も、衆議院・参議院と言った政治の仕組みも、人の命にかかわる医療機器やコンピューターのインターフェイスも、被災地の都市計画も、毎日読む文字も数字も、信号やスマホから流れる音も光も、デザインでないものは」ないのだ。佐藤氏は、デザインの本質は、物や事の価値をカッコよく飾る付加価値ではなく、あらゆる物や事の真の価値を、あらゆる人間の暮しへとつなぐ「水のようなもの」と表現する。「人の営みにおいては、どんな発想も、どんな技術も、どんな素材もデザインを経なければ役立つ物や事にはなりえない」というのが氏の考えである。

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