「多様性」の定義を見直す、
デロイトの急進的な試み

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ダイバーシティ(多様性)に関する議論はこれまで、女性やLGBTQの従業員をいかに企業文化に同化できるか、その支援を目指すものであった。しかし、彼らはいまや「多数派」である。そもため、現行体制への同化のサポートだけでは十分とはいえず、企業上層部の姿勢そのものを見直す時期がやってきた。本記事では、デロイトによる取り組みの紹介を通して、その意義を説く。


 デロイトがダイバーシティ(多様性)の分野で大きな議論を引き起こしている。アプローチを大転換したのだ。女性従業員のネットワークといった、社内のアフィニティグループ(小集団活動グループ)の解散を進めている。同時に、同社がいま注目しているのは……男性社員だ。

 核となる考え方はこうだ。男性社員を教育することで、マネジャー全員に、いまなおリーダー的地位を支配する白人男性も含めて、より包括的なスキルを身につけさせ、責任をもって、よりバランスの取れたビジネスを構築するよう仕向けるのである。

「当社のリーダーの多くは現在も、年齢層がやや上の白人男性ですから、彼らこそダイバーシティの議論の場に参加し、女性たちを擁護していく必要があるのです」と語るのは、デロイトの従業員リソースグループ(ERG:民族や性別、性的志向などを共有する従業員同士をつなぐグループ)の1つで、まもなく解散する「女性ERG」の全米ディレクター、ディーパ・プルショタマンだ。

 これは、まさしく逆転の発想である。

 大企業はこの数十年間、アフィニティグループやERGといったネットワークを通じて、「アウトグループ(外集団)」のエンパワーメントに重点的に取り組んできた。このアプローチが誕生したのは1970年、ゼロックスが現在は「全米黒人従業員協会」と呼ばれるERG 第1号を発足させた時だった。今日では、多くの大企業が有色の従業員やLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア)の従業員、女性従業員などのグループを擁している。

 これらのグループを支援して、異性愛者の白人男性が創出し、支配している企業文化により深く関わっていると感じられるようにする。そうすることで、アウトグループの従業員が自信をつけ、互いに助け合うようになるはずだった。彼らの不安や不満にも対処しやすくなるはずだった。さらには、各グループを通じて、異なる顧客セグメントに関する見識を容易に社内で共有できるようになる……そう考えたのである。

 その志は高いし、1970年には、かなり急進的な考えだったとも言えるだろう。目的の一部は達成された。

 だが、こうしたグループ全体の目的と約束、すなわち「アウトグループの従業員が、社の上層部でリーダーの座につけるよう後押しをする」という本来の目的は、実現には程遠かった。というのも、基本的な考え方に欠陥があったからだ。各グループを設置した暗黙の目的は、アウトグループが企業文化に同化する方法を見つけ出せるよう手を貸すことであり、同化は昇進の前提条件になっていた。

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