伝統企業の生き残り戦略:
破壊的変化にどう向き合うべきか
――書評『ゾーンマネジメント』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第61回はジェフリー・ムーアによる『ゾーンマネジメント』を紹介する。

破壊的変化を前に、迷っている時間はない

 昨今、テクノロジーの進歩は目覚ましく、そうした技術を事業の中核に据えて戦う新興企業が続々と生まれている。彼らの挑戦を受けて立つ伝統企業の多くは、当初、その動向を余裕を持って見守ることができる。ヒトもモノもカネも、あらゆる側面において自社が優位に立てているからだ。

 だが、悠長に構えている間に、とんでもないことに気づく。新興企業が自分たちの既得権を脅かし始めている、と。そこからようやく「自分たちも変わらなければ」と重い腰を上げても、残念ながらもう遅い。すでに勝敗は決しており、効率化という名の縮小均衡の道をたどるか、場合によっては市場からの退場を迫られることとなる−−。

 本書『ゾーンマネジメント』は、伝統企業がこうした事態に陥ることを避けるために書かれた指南書である。

 喫緊の変化を余儀なくされるなか、みずから攻撃を仕掛ける破壊者となるのか、それとも、破壊から身を守ることで競争優位を維持するのか。どちらを選択するかによって、当然、企業が進むべき道は変わってくる。

 著者のジェフリー・ムーアは、その道標を提示するために、彼が「ゾーン」と呼ぶ4つの戦術を規定した。そのうえで、攻撃時と防御時それぞれについて、各ゾーンで何をすべきかを詳細に示している(本書で提示されるマトリックスは極めてシンプルだが、その前提条件を正確に理解する必要があるため、ゾーンの詳細は本書に譲りたい)。

 ムーアは、『キャズム』でその名を馳せた人物である。冒頭でも触れられているが、『キャズム』から続く一連の著作は、フレームワークが中心のやや抽象度が高い内容であった。これに対して本書は、明確なフレームワークを示すと同時に、その戦略を実行するための具体的な手順とケースをカバーしている点は興味深く、特に伝統企業をリードする経営者・マネジャーにとっては一読の価値がある。

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