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新時代の競争戦略-GPSモデル
共有価値共創の実践に向けて (後編)

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>> 「新時代の競争戦略-GPSモデル 共有価値共創の実践に向けて」(前編)はこちら

近年、「企業価値」と「社会価値」を同時に創造しようする「Creating Shared Values:CSV」の考え方が改めて見直されている。企業活動を通じて、利益を追求するだけでなく、社会課題を解決することで成長基盤の構築につなげ、中長期的に企業価値を高めようとする考え方である。
アクセンチュアでは、現代における新しい競争戦略として「GPSモデル」を提唱している。これは、従来の「成長(Growth)」「利益(Profitability)」に加えて、「サステナビリティ(Sustainability)」を組み入れて経営戦略を構築するもので、海外の先進企業では、このコンセプトが実際に取り入れられている。
本稿では、先進企業での取り組みなどを分析しつつ、この時代における「GPSモデル」の意義、有用性について論じる。

「GPSモデル」の実践事例

 GPSモデルを取り入れている企業は、中長期的に高い成長率を達成していることが明らかとなった。

<ヘンケル社(大手化学メーカー、ドイツ)>

■世界経済フォーラムで発表される「世界で最もサステナブルな企業100社(The Global 100)」に過去11年連続でランクインしている※1ヘンケル社は、消費者の環境意識の高まりや自動車業界における軽量化やCO2削減に対するニーズなどをいち早くとらえ、2008年には、世に出す新製品はサステナビリティに貢献するというポリシーを策定した※2。また同年、世界経済不況と資源価格変動のため、業績が大幅に悪化したのを受け、当時のCEOカスパー・ローステッド氏は、「ビジネスポテンシャルの最大化」「カスタマーフォーカスの強化」「チームの強化」の3要素から構成された「Winning Culture」を打ち出した。そして、「ビジネスポテンシャルの最大化」には、生産性の向上やブランド&イノベーションの強化が必要であり、そのために「カスタマーフォーカス」やサステナビリティにおけるリーダーシップが重要になると説いた※3

■そして2012年、環境負荷を軽減しながら生産性を3倍*にする目標「ファクター3」を打ち立て生産性向上に取り組んだ。この結果、2010年から2016年の6年間で生産量1トン当たりの売上高は8%増加し※4、業界平均29%を大きく上回る51%という高利益率を達成した(2016年度、売上高総利益ベース)※5

■同社はサステナビリティに立脚した革新な製品を提供することにより、産業用接着剤市場で世界シェアNo1、洗濯&ホームケア、美容用品市場では欧州市場シェア1位、北米・中東・アフリカ市場シェア2位を達成している※6。同社の長期視点に立った経営に対する投資家からの評価は高く、好業績とも相まって、株価は、過去10年で約10倍と競合他社を大きく上回る伸びを見せている※7

<ユニリーバ>

■ユニリーバもいち早く事業成長とサステナビリティを一体化させ、成長戦略を描いた先進企業の1つである。同社は消費者における社会や環境に対する意識の高まりと購買行動の変化を受け、2009年、「環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを2倍にする」という全社戦略「ザ・コンパス」を打ち出した。

■続く2010年、本戦略を具現化する方策として「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLV)」を導入し、「衛生・健康」「環境負荷の削減」「経済発展」の3分野における目標設定と、これに基づく製品ポートフォリオの見直しを行った。
USLV-3つの目標
1.衛生・健康:2020年までに10億人以上のすこやかな暮らしを支援
2.環境負荷の削減:2030年までに製品の製造・使用から生じる環境負荷を半減
3.経済発展:2020年までにビジネスを成長させながら数百万人の生活水準の向上を支援

■2014年にはこの取り組みをさらに進化させ、サステナビリティを戦略の中核に据えた製品を「サステナブル・リビング・ブランド」として立ち上げた。当該ブランドはほかのブランドよりも50%速く成長し、導入から2年でユニリーバ全体の売上成長の約60%を占めるまでになっている。同社は、「ユニリーバは、サステナビリティをビジネスに組み込むことで成長してきました。これは単に正しい道だというだけではなく、継続的な成長、利益ある成長、競争力ある成長、そして責任ある成長を実現するための唯一の道だと改めて確信しています」と表明している※8 。2009年に「ザ・コンパス」を導入して以来、2017年7月現在、同社の株価は2倍超に上昇している※9

<ボーダフォン>

■2016年、ボーダフォンは自社事業の持続的な成長を実現するために「Sustainable business strategy(以下、SB戦略)」を策定した※10。26カ国で5億人以上に製品・サービスを提供するグローバル企業として、中核事業を通じて経済価値だけでなく、社会価値を提供する方針を明確にした。グループCEOであるVittorio Colao氏は、SB戦略の冒頭で「責任をもって事業を実施するのと同様、人々の生活や生計を支援することは、株主の利益を最大化するために必要な我々の責務と信じている」と述べている。

■SB戦略では、2025年までに自社事業を通じて達成する重要なグローバル変革テーマとして、「女性の社会的地位向上(Women’s empowerment)」「エネルギー革新(Energy Innovation)」「若者のスキルと仕事」の3つの目標が設定された。それぞれが顧客および社会に有意義な社会・経済的利益を創出する可能性がある。また、並行して企業の透明性を向上させる取り組みを進めており、「税金および総経済貢献」「サプライチェーンの健全性および安全性」「モバイル、アンテナ塔および健康」「デジタルの権利および自由」を掲げている。ボーダフォンは、SB戦略および関連プログラムの実践を通じて、SDGsの達成に貢献することも表明している。こうしたSB戦略の策定、実行により、企業の中長期的な持続的な発展を実現することを狙いとしている。

出所:ボーダフォン「Sustainable business strategy」
※1 HENKEL社、2017年1月25日プレスリリース
※2 HENKEL社、2008年3月13日プレスリリース
※3 HENKEL社、2008年度アニュアルレポート
※4 HENKEL社、ホームページ「サステナビリティ戦略」
※5 SPEEDAの情報を基にアクセンチュア分析
※6 HENKEL社、Henkel 2020+
※7 2008年1月~2017年7月の株価上昇率、SPEEDAの情報を基にアクセンチュア分析
※8 ユニリーバ社、ホームページ「ユニリーバについて - 歴史」
「2000~2009年:新たな道を開く」
「2010年~現在:サステナビリティを暮らしの”あたりまえ“に」
※9 2009年12月~2017年7月の株価上昇率、SPEEDAの情報を基にアクセンチュア分析
※10 Vodafone “Sustainable Business Report 2017”
Vodafone Group Plc “Our contribution to the UN SDGs”
 
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